本記事は、SONYフルサイズEマウント用レンズ「ZEISS Batis 2/40 CF(Batis 40mm F2)」のレンズレビューと作例の記事です。
結論からお伝えします。Batis 40mm F2は「ドラマチックでエモい写真」が撮れるレンズです。色ノリが良く、透明感のある写真は、思わず舐めたくなるほど艷やか。さすがレンズの名門、カール・ツァイス。何気ない写真にもエモさを与え、ドラマティックに変えてしまうから驚かされます。
Batis 40mm F2は、めずらしい特徴を多く備えたレンズでもあります。未来的な流線型のレンズフォルム、レンズ上部の有機ELディスプレイ、カール・ツァイスなのに寄れる接写性能。価格やサイズなどのデメリットもあるものの、それを補ってあまるだけのメリットがBatis 40mm F2にはあります。
この記事ではBatis 40mm F2を実際に買って使ってみた感想と、メリット・デメリット、作例などをお伝えします。Batis 40mm F2が気になっている方は、ぜひレンズ選びの参考にしてみてください。
仕様と特徴:ZEISS Batis 2/40 CF
製品名 | ZEISS Batis 2/40 CF |
---|---|
焦点距離 | 40mm |
最短撮影距離 | 24cm |
重さ | 361g |
フィルター径 | φ67mm |
長さ | 106mm |
希望小売価格 | ¥151,000 |
購入 | Amazon / 楽天 / マップカメラ(楽天市場店) |
公式HP | ZEISS Batis 2/40 | Sony αシリーズ用フルサイズオートフォーカスレンズ |
Batis 40mm F2のレンズデザインは、独特な流線型のフォルムをしています。無骨なデザインが多いレンズの世界ではめずらしい形状です。
Batis 40mm F2は箱も独特。紫色の緩衝材が高級感を感じさせます。
レンズキャップ中央に配されたカール・ツァイスのロゴ。
レンズフードもレンズのフォルムに合わせた流線型です。
レンズフードがないとちょっと不格好。社外品のレンズフードはきっと似合いませんね。
マウント部のラバーリングもカール・ツァイスカラーの青色。細部までこだわっている感が伝わります。
Batis 40mm F2の最短撮影距離は24cm。レンズ名(ZEISS Batis 2/40 CF)にある「CF」は「Close Focus」の略称。近接撮影が得意なレンズであることを示しています。カール・ツァイスは被写体に寄れないレンズが多いのですが、Batis 40mm F2は被写体に寄れるめずらしいカール・ツァイスレンズです。
↑上画像の小さなレリーフに、最短撮影距離の24cmまで寄ってみると、
ここまで寄れます。マクロレンズのような接写性能。撮れる写真のバリエーションが増えますね。
レンズ側面にはフォーカスリミッターの切り替えスイッチがあります。マクロレンズじゃないレンズにフォーカスリミッターが付いているのは珍しいですよね。
Batis 40mm F2の上部には、有機ELディスプレイが搭載され、合焦距離などが表示されます。レンズ本体で情報をデジタル表示で取得できるのははBatisならではの特徴です。
画質:コントラストが高くコッテリ
※本ページの作例はすべてBatis 40mm F2で撮影し、RawデータをLightroomでストレート現像したものです。露出や色の調整などは一切行っていない撮影したままのデータです。
Batis 40mm F2の画質は、色ノリが良く透明感があります。これはカールツアイスらしいマイクロコントラストの高さと、Distagon型の色表現によるものなのでしょう。Batis 40mm F2で撮った艷やかな写真には、ウットリさせられる何かが宿ります。
私はこれまでSONYフルサイズEマウントのカール・ツァイス銘レンズの「SEL50F14Z(Planner型)」「SEL55F18Z(Sonnar型)」を使ってきました。それらのレンズの画質とBatis 40mm F2の画質を比べると、あきらかにBatis 40mm F2は色ノリの良さが勝っていると感じます。ただ、色ノリの良さは諸刃の剣でもあり、シチュエーションによっては色がうるさく感じることもあります。
Batis 40mm F2は、青と緑あたりが強めに出ます。カール・ツァイスのレンズは青系の色、寒色が強めにでる傾向があります。Batis 40mm F2もその習いに従った色傾向といえそうです。
Batis 40mm F2のボケは、好きな人が多そうな「とろけるタイプのボケ」です。アウトフォーカスに向けて、なだらかにボケていきます。
40mmでF2だと、あまりボケないのでは? と心配されている方もいらっしゃるかもしれません。しかしBatis 40mm F2は大きく背景をボカすことができます。理由はその「接写性能の高さ」です。
ボケの大きさは「F値」と「被写体までの距離」で決まります。Batis 40mm F2の最短撮影距離は24cm。これはSEL50F14ZやSEL55F18Zの最短撮影距離の半分くらいです。Batis 40mm F2でF値を開放F2に設定し、最短撮影距離で撮れば、SEL50F14ZやSEL55F18Zよりも大きな背景ボケを得ることができます。被写体と背景を大きく分離した「立体感のある写真」が、簡単に撮れます。
重さとサイズ:軽いけれどデカイ
Batis 40mm F2は軽いレンズです。レンズ重量は361g。スナップや旅先で使いやすく、軽いので長時間撮り歩いても疲れません。
Batis 40mm F2(361g)とα7C(509g)を組み合わせると870gになります。
カメラとレンズを合わせても1kg未満なので、片手で撮り歩けます。軽いはやっぱり正義です。
ただ、残念なのがレンズサイズです。Batis 40mm F2はその軽さとは裏腹に大きめのレンズです。Batis 40mm F2はレンズフードもかなり大きいため、レンズフードを付けるとズームレンズくらいのサイズになってしまいます。40mm F2ならもっと小さくできたんじゃないの? と思わずにはいられません。
ズームレンズのSEL24105Gとの比較。サイズ感としてはほぼ同じくらいの存在感があります。
このレンズサイズの原因は、レンズ上部に搭載された有機ELディスプレイによるものではないかと疑っています。正直な話、有機ELディスプレイはカメラのファインダーを覗いているときにはなんの意味もありません。先進的ではありますが、撮影者にとって意味のないモノを搭載するというのはいかがなものかと……有機ELディスプレイはいらなかったから、もっと小さくして欲しかった。Batis 40mm F2を買った人は、みんなそう思うことでしょう。
競合と比較:フルサイズEマウント40mmレンズでは最高値
Batis 40mm F2の競合レンズとしては、SEL40F25Gがあります。両者の大きな違いはサイズと画質です。
Batis 40mm F2はサイズではSEL40F25Gにかないません。SEL40F25Gの外形寸法は、6.8 × 4.5cm、重さは173g。Batis 40mm F2の約半分くらいの重量で、非常にコンパクトなレンズです。普段使いのカバンに入れて持ち運びたい方は、SEL40F25Gを選ぶべきでしょう。
画質については個人的にはBatis 40mm F2のほうが良いと感じます。カール・ツァイスらしいマイクロコントラストの高い画作りは、緻密で繊細な写真を量産してくれます。青が強くでる色味も、ドラマチックさやエモさを感じやすいように計算されているのでしょう。フラットな画質が特徴のSONY純正レンズであるSEL40F25Gではこうはいきません。逆にいえばフラットな画質が好きな人はSEL40F25Gを選んだほうが良いでしょう。
Batis 40mm F2は、良くいえば「味のあるレンズ」、悪く言えば「クセの強いレンズ」です。現像で大きくいじりたい人は、SEL40F25Gのほうがフラットでいじりやすいかもしれません。
フルサイズEマウントの40mmレンズは、Batis 40mm F2とSEL40F25Gのほかに、Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Asphericalがあります。私も所有していたレンズで、ピント面がシャープでボケが本当に美しいレンズです。ボケでいえばBatis 40mm F2よりもVoigtlander NOKTON 40mm F1.2 Asphericalのほうが私は好みです。ただ、Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Asphericalはオートフォーカスのないマニュアルレンズです。オートフォーカスが使えるBatis 40mm F2と比べるのは少し違うかもしれません。
40mmのレンズは35mmのレンズとよく比較されます。フルサイズEマウントの35mmは激戦区で、Batis 40mm F2と比較されそうなレンズでいうと、同じカール・ツァイスのSEL35F14Zや、GMレンズのSEL35F14GMがあります。
個人的な経験からすると、40mmの画角は、35mmというよりは50mmに近いと感じます。周辺情報を大きく取り込める35mmより、被写体が明確になる50mmに40mmレンズは似ていると思うんです。ミリ数だけでみると40mmは35mmに近いのですが、そう単純でないのがレンズの面白いところ。広角側の1mmの違いはかなり大きいものです。
フルサイズEマウントの50mmあたりのレンズは、SIGMA 45mm F2.8 DG DN、カール・ツァイス銘レンズのSEL50F14ZとSEL55F18Z、GMレンズのSEL50F12GM、GレンズのSEL50F25G、撒き餌レンズのSEL50F18Fなどがあります。この中でBatis 40mm F2の競合となりそうなレンズといえば、私もかつて所有していたSEL50F14Zです。
多くの点においてBatis 40mm F2は、SEL50F14Zより優れています。最短撮影距離やレンズ重量などで勝負すると、Batis 40mm F2の圧勝です。SEL50F14Zは太刀打ちできません。スナップや旅行など、一般的な用途であればBatis 40mm F2のほうが圧倒的に使いやすいレンズです。
しかしポートレートだけはSEL50F14Zのほうが優れていると私は感じます。私はポートレートを撮るならBatis 40mm F2よりSEL50F14Zを絶対に選びます。感覚の話なので言葉にするのがムズカシイのですが、SEL50F14Zで撮ったポートレートは繊細でふんわりとしていて、ほのかな温かみを纏っていると感じます。それらの特徴は、まさに人が女性に抱くイメージそのもの。単純に開放F値がF1.4でボケが大きいので、被写体と背景の分離が容易ということもあります。SEL50F14Zは、女性を撮るために生まれてきたようなレンズだとしみじみ思います。
ポートレートで比較すると、Batis 40mm F2はSEL50F14Zよりも繊細さに劣る気がします。ポートレートにおいてはBatis 40mm F2の発色の良さが仇となり、SEL50F14Zより大味な印象を抱かせるのかもしれません。色味もSEL50F14ZよりBatis 40mm F2のほうが青が強めに出るので、人肌との相性が悪い発色傾向です。現像でどうにかなる部分ではありますが、SEL50F14Zは根本的にポートレートにハマる何かがあり、Batis 40mm F2にはそれがない、と感じます。あくまで個人的な感想ですし、Batis 40mm F2とSEL50F14Zを比較した場合の話です。Batis 40mm F2がポートレートに不向きなレンズというわけではありませんのでご注意を。
ポートレート目的でBatis 40mm F2を検討されている方は、ぜひSEL50F14Zも検討されてみてください。SEL50F14Zは、中古でずいぶん安く買えるようにもなってきましたから。
価格:新品は値上がり。中古が狙い目
カール・ツァイスのレンズは2022年4月6日から値上がりします。
ZEISS製品価格改定のお知らせ | お知らせ | ケンコー・トキナー
Batis 40mm F2は、これまでの151,000円から173,000円に価格が変更になります。22,000円も値上がりしちゃうんですね。
2022年3月16日時点で、Batis 40mm F2は中古だと110,000円代から買えます。新品の値上がりとともに、中古の取引価格の高騰も予想されるので、気になる方は早めに購入することをオススメします。
カール・ツァイスのBatisシリーズのレンズは中古の値崩れが大きいのですが、Batis 40mm F2に限っては、発売からしばらく経つというのにあまり値崩れしません。それだけ人気のレンズということなのでしょうね。
作例:37枚
F値:4.0 SS:1/160 ISO:100
F値:5.0 SS:1/250 ISO:100
F値:2.0 SS:1/125 ISO:125
F値:2.0 SS:1/125 ISO:640
F値:2.0 SS:1/125 ISO:200
F値:2.0 SS:1/125 ISO:2000
F値:2.0 SS:1/100 ISO:6400
F値:2.2 SS:1/125 ISO:100
F値:2.0 SS:1/125 ISO:2500
F値:2.0 SS:1/125 ISO:160
F値:2.5 SS:1/125 ISO:100
F値:2.0 SS:1/60 ISO:6400
F値:2.0 SS:1/125 ISO:640
F値:4.0 SS:1/160 ISO:100
F値:8.0 SS:1/125 ISO:250
F値:8.0 SS:1/125 ISO:250
F値:5.6 SS:1/800 ISO:100
F値:4.5 SS:1/200 ISO:100
F値:2.0 SS:1/4000 ISO:100
F値:2.0 SS:1/4000 ISO:100
F値:2.0 SS:1/4000 ISO:100
F値:2.0 SS:1/125 ISO:200
F値:2.0 SS:1/125 ISO:250
F値:2.0 SS:1/400 ISO:100
F値:9.0 SS:1/4000 ISO:800
F値:7.1 SS:1/4000 ISO:800
F値:5.6 SS:1/4000 ISO:800
F値:5.6 SS:1/1250 ISO:100
F値:2.0 SS:1/1600 ISO:100
F値:8.0 SS:1/800 ISO:100
F値:8.0 SS:1/800 ISO:100
F値:2.0 SS:1/4000 ISO:100
F値:3.5 SS:1/125 ISO:100
F値:2.0 SS:1/400 ISO:100
F値:2.2 SS:1/125 ISO:100
F値:2.2 SS:1/125 ISO:100
F値:2.2 SS:1/125 ISO:100
まとめ:買って損しない神レンズ
Batis 40mm F2は神レンズです。これまでたくさんのレンズを買って使ってきましたが、やはり別格の素晴らしさがあります。さすがカール・ツァイスと言わざるを得ません。価格のことを抜きにできるのであれば、万人にオススメしたいレンズです。
例外として「そもそも40mmの画角が合わない」の人は手を出さないほうがいいでしょう。40mmという画角はちょっとクセのある画角です。たまに「40mmは、35mmと50mmの両方の特徴を併せ持ったレンズ」みたいな記述をネット上で見かけますが、個人的には疑問を感じます。40mmは「40mm」という画角です。35mmでも50mmでもありません。もしあなたが40mmレンズに35mmや50mm的なものを期待しているのであれば、やめておいたほうが良いと思います。40mmは、狙いをすまして撮るには一歩踏み込まなければならず、広く撮りたいときには一歩下がらなければならない画角です。私の場合は、常に「構えて一発で撮れる」ことがあまりなく、微調整が必要になります。わかりやすくいえば40mmは中途半端な画角なんですね。私は慣れたら「調整のおもしろさ」というか「考えて撮るおもしろさ」を感じるようになりました。くれぐれも35mmや50mm的なものを期待して買わないように気をつけてください。
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