兼六園をどのように感じるか、なぜそう感じたのか。
観る者の「在り方」が問われます。
兼六園 石川県金沢市
金沢城に隣接する日本庭園「兼六園」は、歴代の加賀藩主たちによって作り上げられた日本庭園です。
国の特別名勝に指定され、水戸の「偕楽園」、岡山の「後楽園」と並ぶ日本三大名園として知られています。
兼六園の起こりは、加賀藩五代目藩主「前田綱紀」の時代に遡ります。綱紀が金沢城に隣接したこの土地に別荘を構え、周辺を庭園としたことが兼六園のはじまりです。
意外なことに加賀藩初代藩主「前田利家」の時代には、兼六園は存在していませんでした。兼六園を「前田利家の庭園」と誤解されている方は多いのではないでしょうか。
兼六園という名は、中国の古書「洛陽名園記」の中にある洛陽の名園「湖園」を記した一節「宏大・幽邃・人力・蒼古・水泉・眺望の六つを兼ね備える名園」に由来します。
名の由来に違わず、兼六園では様々な名勝を一所で観ることができます。
兼六園の園内では、
類まれな造形を見せる木々
池や噴水などの水場
芸術性の高い橋や石灯籠
高台という立地からくる展望の良さ
など、人が名勝とよぶ景色や風景を数多く観ることができます。
二本足で佇む姿が印象的な「徽軫灯籠(ことじとうろう)」。
兼六園のシンボル的な石灯籠で、兼六園が紹介されるときは、必ず徽軫灯籠のある風景が紹介されます。
兼六園の中で最も大きい池、霞が池。
霞ヶ池の周辺は、徽軫灯籠をはじめとした見どころが多く、観光客が集まる兼六園の中心的な場所です。
兼六園の半ほどにある日本武尊(ヤマトタケル)の像。西南戦争の戦没者を弔う慰霊碑です。
雅な日本庭園の中にあって、一際異彩を放つ像がここに設置されているのは、素晴らしい風景の中で戦没者が安らかであるように、という想いの現れなのでしょう。
兼六園には「日本最古」といわれる噴水があります。
この噴水は、前述の霞ヶ池との「高低差」を利用して水を吹き上げる仕組み。電気のない時代によく噴水を作ろうと思えたものです。雅なるものへの飽くなき探求のなせる業でしょうか。
兼六園について簡単に紹介してみました。
兼六園は風光明媚な日本庭園であり、観るに値する場所だと個人的には思います。
兼六園を訪れたのは今回で3回目。
兼六園を訪れた過去を振り返ると、自分の「在り方」の変遷に気がつきます。
友人たちと初めて兼六園を訪れた20歳の頃。
その時は兼六園の何が良いのかサッパリわかりませんでした。ただの広い庭、時間の無駄、そう感じたのを覚えています。
40歳を目前にひかえた今は、兼六園が魅力的な場所に感じます。
当時「変なグネグネした木」だったものは、その有り様の貴重さに驚かされる「銘木」となり、「ただの広い庭」は「長い年月と庭師の匠の技術で創り上げられた見事な名園」となりました。
昔と今では、自分の在り方が大きく変わったのでしょう。当時は兼六園の良さを知ろうともしませんでしたが、今は兼六園の良さを知りたいし、良さがわかる自分で在りたいと思います。
歳をとるにつれ「対象を観ることで自分を見る」ようになってきました。メタ的に物事を捉えるようになってきたのでしょう。つまらないモノやコトがあるわけではなく、つまらないと感じた自分に気がつく。その体験を通じて今の自分の在り方に気づける。
最近、とみに美術や芸術に興味がでてきたのは、結局のところ自分への興味関心の現れなのかもしれません。
観ることで自分を見る。
あなたの目には兼六園がどのように映るでしょうか。