加賀百万石の名将「前田利家」の居城として知られる「金沢城」。
天守閣を持たない城の観光は、人を選ぶので注意が必要です。
金沢城公園 石川県金沢市
金沢城は、隣接する兼六園と並び金沢市を代表する観光地です。国の重要文化財に史跡として指定されています。
日本の城といえば、天を貫くような立派な天守閣を連想される方が多いと思います。しかし金沢城には天守閣がありません。
当時は立派な天守閣があったようですが、慶長7年(1602年)に落雷による火災で消失し、再建されぬまま今日に至ります。
天守閣以外で当時から遺っているのはわずか一部。城の大半は平成に入ってから復元されたものです。
今の金沢城は、私の家より新しい建築物です。
金沢城の観光を「する」「しない」の分かれ道がここにあります。
城といったら天守閣あってこそ、という方は、無理に金沢城を観光する必要はありません。金沢市や石川県にはたくさんの観光地があります。そちらを優先されたほうが楽しめることでしょう。
では、どんな方であれば金沢城の観光を楽しめるのでしょうか。
その答えのひとつが「石垣」です。
金沢城は「石垣の博物館」といわれるほど多様な石垣を見れることで知られています。
石垣にはモザイクアートに通じる芸術性があります。
隙間なくピッタリと並べられた石垣の気持ちよさといったら。
もうひとつの答えは「建築」です。
金沢城の独特な建築技術は、建築好きにはたまらないことでしょう。
金沢城の代表的な建築技術のひとつに、「菱形(ひし形)」を取り入れた建築デザインがあります。
建物が菱形のかたちをした「菱櫓」は、内部の柱も菱形。
当時、菱形の柱を作るのは大変難しかったそうで、金沢城の築城に関わった職人の高い技術がうかがえます。
一般的な建築の建物は長方形になりがちです。しかし長方形は、角が90度になることで死角が大きくなってしまいます。
その点、菱形の建物は角度が浅い角が2つできるため、死角が長方形と比べると大きく減ります。視野を広くとれるようになり、監視がやりやすくなるというわけ。なるほど、よく考えられています。
金沢城をはじめて見た人は、外観の優美な白さに驚くのではないでしょうか。
金沢城が白い理由は、建築に使われている瓦と壁の技法によるものです。
金沢城の屋根には「鉛瓦」という特殊な瓦が使われています。
鉛瓦は強度の面で優れた瓦。表面に鉛を張りつけた瓦で、屋根が白く見えるのはそのためです。
金沢城の壁は、白塗りの漆喰を使った海鼠壁(なまこかべ)で作られています。
金沢城の海鼠壁は、真四角を並べたパターン(□)なのが特徴的です。古い蔵や武家屋敷などで見かける一般的な海鼠壁は斜めにラインをとるもの(◇)が多く、真四角のパターンは貴重です。
金沢城の整然とした印象は、海鼠壁の独特なパターンからくるものなのでしょう。
金沢城の櫓は階段で登れるようになっており、金沢市内を見渡すことができます。
当時もこうして敵に攻め込まれないか町を監視していたのでしょうね。
ただ、櫓の見晴台に登る階段はかなりの急階段。
金沢城は靴を脱いで見学する施設のため、靴下を履いている人は滑りやすいので注意が必要です。
城内では当時の様子や金沢城の歴史を物語る遺物が展示されています。
資料館を名乗れるほどの展示数はありませんが、貴重な資料の数々は歴史ロマンを感じるものばかり。
こうした遺物から歴史を紐解きながら金沢城は今も復元作業が進められています。
最後に撮影してきた写真をいくつか掲載します。
前述のように、金沢城の観光は人を選びます。
天守閣のない城は興ざめ、という人もいれば、菱形を使った当時の建築様式に感嘆する人もいることでしょう。
金沢城の見学の所要時間は1時間ぐらい。
自分がどちらのタイプなのかを見極め、限られた旅の時間を有効活用してください。
私は今回で3回目の金沢城見学でしたが、来るたびに新たな場所が復元されていくという、築城見学のような楽しみ方を覚え始めました。復元中の城ならではの楽しみ方です。
来年2020年にはまた新たな施設が復元を終えて公開される予定です。
次回もまた新しい金沢城が見れると期待しています。