田んぼの真ん中にある割烹料理屋さん?
フレンチのイメージにほど遠いお店の外観に戸惑いつつ、靴を脱いで上がった先に待ち受けていたのは、地元新潟らしさを大切にしたアーティスティックでストイックなフレンチ体験でした。
レストラン ウオゼン(Restaurant UOZEN)
レストラン ウオゼンは、新潟県三条市にある完全予約制のフレンチレストラン。
シェフ自ら狩猟や釣りに出かけて調達した地元食材を使った「ジビエ」が名物のお店です。
まずはこちらの動画をご覧ください。
オーナーシェフの、お店のある燕三条地域にかける想いや、地産地消にこだわる姿勢が伝わってきます。
冒頭でもいったように、お店に着くとまずその外観に驚かされます。写真がブレてしまいわかりにくいのですが、外観はどうみても割烹料理屋さんのソレ。電話一本で仕出しをしてくれそうです。
調べてみると、元は「魚善」という割烹料理屋さんだったそう。そこに東京で人気フレンチレストランを経営していた現在のオーナーシェフが、東京のお店を閉めて新潟に移り住み始めたのが「レストラン ウオゼン」。建物は当時のままで中を改装して使っているため、和風の趣がある不思議なフレンチレストランになったというわけです。
玄関で正座したスタッフに出迎えられ、靴を脱いで入るフレンチレストランは、世の中広しといえどもココだけではないでしょうか。
外観とはうってかわってモダンな雰囲気の店内。
多くのワインが収蔵された大きなワインセラーが目をひきます。
フレンチのディナーメニュー おまかせコース
レストラン ウオゼンのメニューは「おまかせコース」のみ。
予約時に食べられないもの、苦手なものなどを伝えておけば対応してもらえます。
以下に掲載する料理は、すべてディナーメニューです。
メニュー名や素材などはうろ覚えなので、ディテールに間違いがありましたらご容赦ください。
自然を表現した箱庭のような見た目がおもしろい、アミューズ盛り合わせ。
熊や猪などの珍しい食材を使った料理を、手づかみでいただく野趣あふれる一品。
牡丹海老のブイヤベース仕立て。
見た目の華やかさとは対照的に、海老本来の旨みがシンプルに味わえる料理です。
メガニとアボカドのディップ カリフラワームース 内子と外子。
幾重にも重なる味のコントラストが絶妙なカップ料理。
一番印象に残っている料理で、いつまでも食べ終わりたくない、と久しぶりに感じた料理でした。
自家製パンと佐渡バター。
佐渡バターというものの、カタチは佐渡も含めた新潟県そのもの。
地元の金物屋さんに依頼して金型を作ってもらったという、金物のまち三条らしいエピソードをスタッフさんがきかせてくれました。
バターの上にかけられた塩は、新潟県の最北、村上市のミネラル工房さんで作られた塩だそうです。
魚のカツ。何の魚か思い出せないのですが、確かシェフが佐渡沖で釣ってきた魚と聞いた気がします。
熊、鳩、鴨、銀杏などを使ったジビエ料理。
臭みはありませんがクセの強い料理で、濃厚な味わいがワインを誘います。
ソイと白菜。緑色の粉末はセロリです。
前品が濃厚な味わいだったのに対し、こちらは淡白でスッキリとした味わいが印象的な料理でした。
薪を使って調理されているそうで、ほのかな木香が口の中に広がります。
この牛肉がどこのお肉か思い出せません。
県産牛肉ときいたような、そうでないような……。
こちらも薪を使って調理されています。
弾力のあるお肉で、外側はカリッとした歯ごたえ、噛むと中から肉汁がジュワーと溢れてきます。
濃厚な牛乳の味わいを残したバニラアイスと、とろける口溶けが絶品のチョコレートケーキ。
このチョコレートケーキは本当に美味しかったです。
ふんわりとろける食感は、ケーキを食べているというよりアイスの食感に近く、驚かされます。チョコレートは濃さを感じるもののクドさは一切なく、どこか爽やかさを感じる味わいでした。
お茶と、お茶菓子。
お茶菓子をのせた年代物の和箪笥のようなワゴンがおもしろいですよね。
お茶菓子は、濃厚プリン、りんごのマカロン、ブルーベリーを使った自家製キャラメル、の三種。
自家製キャラメルなんてはじめて食べました。歯にくっつく感じはまさにキャラメル。
驚きに溢れたコースを締めるのに相応しいお菓子でした。
感想
レストラン ウオゼンは「大胆な芸術性を丁寧で繊細な仕事で表現するレストラン」という印象でした。
今の時代、名のあるレストランであれば食材にこだわるのは珍しくないとはいえ、ウオゼンのようにシェフ自らが狩猟や釣りに出かけて地元食材を調達するレストランは稀です。
お店のある燕三条地域が、刃物・洋食器の町ということもあり、ウオゼンで使われている食器はメイドイン燕三条。食器まで地産地消というレストランは珍しいでしょう。
そうした物珍しさに目がいきがちですが、ウオゼンの魅力はやはり料理そのものにあります。
選びぬかれた食材・食器を使って創り出される芸術性の高い料理の数々。絵画のような美しい見た目もさることながら、これまでに体験したことのない味や食感に興奮しました。すべてが新しいのです。
熊や猪など食材として珍しいものもあります。しかし、そういうことではないのです。馴染みのある牛肉や魚、デザートにいたるまで「新しい体験」に感じられるのです。
ウオゼンの料理は、フレンチを食べ尽くした食通に好まれそうな味だと思います。
私のようなグルメレベルの低い人間は「新しい」という軽薄な感想を述べるのが精一杯。しかし食通なら、体験の豊富さからウオゼンの料理を真の意味で理解し味わい尽くすことができるのではないかと思います。同じ体験でも経験の差でウオゼンの料理は何倍にも味わい深いものになる気がします。
最後になりますが、レストラン ウオゼンは食べログの新潟県ランキングで1位のお店になっています(2019年1月 現在)。
ナンバーワンの期待を裏切らぬ素晴らしいお店です。フレンチがお好きな方は燕三条まで足を運んでみてはいかがでしょうか。