「どうしてこうなった?」
Travel Tripodを使うたびにそう感じずにはいられない、そんな半年間でした。
新進気鋭のカメラ用品メーカーPeakDesignが発売したトラベル三脚「Travel Tripod」。あのPeakDesignがはじめて発売した三脚です。永きにわたってイノベーションとは無縁だった三脚業界に、きっと新風を巻き起こしてくれるだろう、そう思っていた人は多いのではないでしょうか。私もそのうちのひとりです。
ところが現在。Travel Tripodを使うたびにストレスが蓄積されていく毎日を送っています。本当に、どうしてこうなっちゃったんでしょうね……。
今回は、購入から現在までの半年間を振り返って、「Travel Tripodのダメな部分」を酷評レビューとして書きます。この半年で蓄積されたストレスをすべて吐き出します。Travel Tripodを買うべきか買わぬべきかでお悩みの方の参考になれば幸いです。
カーボンなのに重たい
私はTravel Tripodのカーボンとアルミの両方を購入した経験があります。
ピークデザインの三脚をレビュー カーボン版とアルミ版の違いを比較 Peak Design Travel Tripod
商品写真だけではわからないことがあるだろう、ということでカーボンとアルミ両方を買ってみたんですね。そして両者を比べてカーボンのほうがやや軽くて自分に合っている、ということでカーボンを手元に残しました。
が、Travel Tripodのカーボンは、軽さがウリのカーボンのはずなのに重たいです。カーボンの重量は1.27kg。私が過去に所有していたバンガードのカーボン製トラベル三脚「VEO 2 265CB」の重さは1.3kg。重さでいえばTravel Tripod と VEO 2 265CBはほぼ変わらないはずなのに、Travel Tripodのほうが断然重く感じます。
超速で設置!軽くて剛性のあるカーボン製のトラベル三脚!VANGUARD トラベル三脚 VEO 2 265CB
Travel Tripodは収納時にムダな隙間がないので、それゆえに重く感じる、ということでもないと思うのですが……。手元にTravel Tripodの重さを量れるものがないので正確なことはいえませんが、この重さは持ち運びを前提としたトラベル三脚としてはどうなんだい? と思わずにはいられません。
Travel Tripodはトラベル三脚としては決して軽くない、と覚悟されたほうがよろしいかと思います。よくいえば剛性があって風の影響をあまり受けないともいえなくはないのですが。
雲台の上げ下げが面倒
Travel Tripodで雲台の角度を変えるには、ネジを緩めてセンターポールを上げなければなりません。これが毎回毎回めんどうくさいんです。
それなりにセンターポールを上げないと、雲台が三脚に干渉して角度調整が満足にできません。
そして上げた雲台をしまうときもストレスを感じます。雲台を回転させてハマる位置に微調整しないと、雲台をきっちり収納することができません。
雲台を回転させて溝に合うようにして押し込む。
この作業を収納時に毎回毎回やる必要があります。めんどうくさい……。
上げなければ雲台の角度調整ができず、上げて使ったあとは微調整して収納しなければならない。よくこんな仕様でOKを出したな、と不思議になるほど使いづらい仕様です。
縦位置の撮影角度に制限がある
これはなかなかヤバい仕様です。Travel Tripodは雲台の仕様上、縦位置でのアングルの調整幅がすごく狭いです。ゆえに見上げたり、見下ろしたりする構図を作ることができません。
上はこれが精一杯。
下はこれが精一杯です。
星景撮影などでは角度が足りずイライラしっぱなしです。
このようなトンデモ仕様になっている理由がコレ。雲台の裏側に問題があります。
雲台を縦位置にして回すと、センターポールと雲台裏の出っ張りがぶつかってしまい、これ以上のアングル調整ができないようになっているんです。
一応、この問題の解決策としては、「カメラを逆に取り付ける方法」があります。
↑本来は上画像の向きにカメラを取り付けるのですが、
↑このように反対向きにカメラを取り付けます。
すると、先程のカメラ向きでは実現できなかった縦撮影アングルを作ることができるようになります。
ただ、カンの良い人はお気づきでしょう。こうすると今度は縦撮影での「水平」撮影ができません。水平で撮影するためには、また雲台からカメラを取り外して逆向きにして取り付け直さなければなりません。なんでこんな仕様になってるんでしょうね……。
さらなる裏技としては、カメラに取り付ける「シューの角度」を変えることで縦位置での上下のアングル角度を調整できます。
ただ、Travel Tripodのシューは取り付けに六角レンチを必要とします。つまり、縦位置であおり構図を作るために、わざわざ雲台からカメラを一旦はずし、その上で六角レンチを使ってシューの角度を変え、再び雲台に取り付ける、というこれまた超絶面倒くさい作業が発生します。
私は星景撮影に行って真っ暗闇の中でこの作業をしました。地獄です。スマホのライトで照らしながら小さな六角レンチを使いつつこの作業をするのは簡単ではありません。
六角レンチをなくす
で、その必要な六角レンチをなくしちゃうわけです。
Travel Tripodはシューの取り付けや、三脚をローアングルに可変する場合、雲台の交換時に六角レンチでネジを付け外しする必要があります。って、よく考えたら今どきこんな面倒くさい仕様も珍しいですよね。Manfrottoの三脚などではまずありえない仕様です。
ともかく、Travel Tripodは六角レンチが必要になるので、Travel Tripodの脚部分にアタッチメントを使って六角レンチを取り付けておけるようになっています。が、これが極端にゆるくて外れやすいことは購入直後のレビューでも指摘したとおり。
【酷評】Peak Designの三脚「Travel Tripod」の辛口レビュー
なので私は脚部分には取り付けないようにして持ち運んでいたのですが、六角レンチのような小さなアイテムを星景撮影のような真っ暗なシチュエーションで使うのは大変です。使っていて地べたに落としてしまったときの私の悲劇を想像してください。懐中電灯を片手に地べたを這いずりながら探していたときは泣きそうになりました。
Travel Tripod本体に六角レンチを紐でくくりつけようかとも考えました。Travel Tripodに付属してくる六角レンチには、ストラップを通せる穴がありますし、Travel Tripod側にもストラップを通せるような穴があります。ただ、持ち運ぶときに六角レンチが三脚とぶつかってカンカンいうことを想像するとやる気になれなくて……もう誰か助けてほしい。
雲台を交換するのに別売アタッチメントが必要
もう私は疲れました。Travel Tripodのどうしようもない雲台仕様と格闘する日々に。
そこで私は、Travel Tripodの雲台を使うことを諦め、Manfrottoの雲台を使うことにしました。そもそもTravel Tripodの雲台がダメダメなわけですから、ほかの雲台に変えてしまえば問題は解決する、そう考えたんですね。
でもね、こんなところにもストレスポイントがありました。
PeakDesignのトラベル三脚「Travel Tripod」 の雲台を交換する手順とイライラ
くわしくは↑の記事に書いたのですが、まずTravel Tripodは雲台を交換するのに「別売りのアタッチメント」を買わなければなりません。これが発覚したときのイライラはすさまじいものがありました。後述しますが、Travel Tripodは決して安い三脚ではありません。それなりのお値段を出して買った三脚の仕様がコレかよ、と……。
もうここまでくるとヤケです。カネも手間もいくらでもかけてやる、というこれまでに経験したことのない謎の精神状態に突入し、Travel Tripodの雲台交換アタッチメントを買ってやりました。お値段4,000円ほど。
アタッチメントと交換する雲台が届き、いざ雲台を交換することに。めんどい、超絶めんどい。嘘でしょう? そう言いたくなるほどの面倒くささです。例によって雲台交換も六角レンチを使ってやらなければならないのですが、三脚の支柱に六角レンチが干渉してしまい、クルクルまわしながら調整できない部分があり、いちいち六角レンチを抜き差しして少しずつねじを緩めたり締めたり。詳細は先述の記事に書きましたが、とにかく面倒な作業でした。
さらに私を悲劇がおそいます。雲台交換アタッチメントの手順通りに進めたところ、買ったばかりの雲台に傷がつくという憂き目にあいました……もう、もうなにひとつ良いことなんてない(涙)。
値段が高すぎる
こんなどうしようもない仕様にも関わらず、Travel Tripodのカーボンは現在10万円ぐらいで販売されているという現実。もう笑うしかありません。クラウドファウンディングのKickstarterで購入した場合でも7万円くらいしましたよね。
よく「PeakDesignは信者がいるから〜」と揶揄されます。なるほど、その通りだと思います。そして信者の末路は「人柱」なのでしょう。私も日頃からPeakDesign製品のお世話になっていましたから、それらの使いやすさから過剰な期待をしてしまった感は否めません。どんな企業でも失敗作はあります。それは理解しているけれどせめて言わせてほしい。こちらも安くないお布施を払っているのです。返品させろ! お金を返せ! とは言いませんから、せめて物言う人柱でいさせては欲しい。
私の体感では、Travel Tripodの適正価格は24,800円(税込)です。いや、もっと安くてもいいかもしれません。
作りが粗悪
だって仕様が悪いだけでなく、三脚の作りも粗くて酷いんです。 購入した直後のレビューで書いていますが、この粗悪な作りは、とても10万円くらいする三脚の作りとして納得はできませんでした。
毎回、Travel Tripodを使うたびにこういった作りの粗い部分が目に入ります。あぁ、とため息が出ます。なんでこんな三脚を買っちゃったんだろう、なんでこんなことになっちゃったんだろう、涙がにじむ思いです。安かろう悪かろう、ならば、高かろう良かろう、と想像した過去の私を殴りたい。
正直にいうとメルカリで売ろうかと思ったこともあります。気に入らないモノをずっと持ち続ける理由もないでしょう。けれど、このTravel Tripodを「粗悪品」と認定している自分の心がそれを許しません。ほかの誰かが同じ思いをするのではないか。そう思うとメルカリに出品することはできませんでした。私はもはやTravel Tripodと心中する覚悟です。売ることも捨てることもできません。
言いたいことを言って少しスッキリしました。
本当にTravel Tripodは頭にくる三脚なのですが、いまはもう逆に諦めてTravel Tripodを使い続ける覚悟です。機能性は最悪の三脚ですが、見た目の良さでいえばナンバーワンであることに代わりありません。それを心の拠り所としてTravel Tripodを使い続けようと思います。