発刊記念時の安売りで購入したまま積ん読していた本だったのですが、読んでみたら巷のコミュニケーション本とは毛色の違うアプローチで新鮮な本でした。
嫌われる人を選ぶ
そして誰から憎まれるのか、嫌われるのかを選ぶんだ。誰からも愛されようとする人間は、誰からも愛されない。ただのいい人で終わっちまう。ビジネスでも恋愛でも友人関係でもそう。自分と合わない人間と無理に付き合っているほど、人生の時間は長くないんだ。
自分から「好かれたい人」ではなく「嫌われる人」を選ぶというのは斬新な視点です。
考えてみれば「好かれたい人」って選ぼうとすると大変ですが、「憎まれていい、嫌われていい人」のタイプを選ぶほうが簡単です。
逆説的なアプローチですが、確かに嫌われる人を選んでいるうちに自ずと「好かれたい人」も明確になっていきますね。
ターゲットを絞る
おれは八方美人ではなく、一方美人、七方ブスで生きていくよ。
どんな世界でも成功の秘訣に上がる「ターゲットを絞る」ということですね。
本書のタイトルは「一瞬で愛される技術」ですが、正確には「一瞬で(自分で選んだ人から)愛される技術」ということなですね。
一人に愛されるためには多数の人から嫌われるぐらいの覚悟が必要ということです。
コンプレックスは幻想
頬がゆるめば、財布の紐もゆるむ。そんな自分でもよく意味の分からない独自の理論を確立し、気づいたら営業の世界でトップセールスマンになって、女性からもビックリするくらいもてるようになった。そのとき、気づいた。 おれがコンプレックスだと思っていたのは全て幻想だったと。
コンプレックスの塊のような男だった著者は、開き直ってそのコンプレックスを「笑い話」に変換するようにしたら物事がうまく回るようになったそうです。
大半の人は「自分のコンプレックスなんて語ったらひかれるのではないか」と躊躇してしまいますし、実際にそのとおりなこともあります。
しかし、やはりここで大事なのは「ひく人間」もいれば「受け入れてくれる人間」もまた必ずいるということなのです。
コンプレックスを披露した結果、たまたま「ひく人間」に出会ってしまったとしても、それは「病気の早期発見」のようなものだと思って、他の自分を受け入れてくる人を探すようにしましょう。
デキるダメ人間になれ!
つまりはそういうことだ。周りから応援される人間って、「デキるダメ人間」なんだ。
これは結構な説得力ありますよね。
我々がついつい陥りがちになってしまう完璧主義ですが、そもそも完璧な人間というのは愛されないものです。完璧であるがゆえに自己完結してしまっていて応援を必要としませんし、愛嬌がないんですよね。
よくいえば他者の手を煩わせないということなのですが、手のかかる子供ほど可愛いというように、人は他者のダメなところを自分が補完したりすることに喜びを感じるものなのです。
完璧主義の人はあえてダメ人間になるというと難しいかもしれませんが、そもそも完璧主義から離れられないというのも、ひとつのダメさと捉えることもできます。要は捉え方の問題ですね。
他者から手を差し伸べてもらうには、差し伸べてもらえるだけの「余地」を残しておくのが大切なのかもしれません。
正直なところ話の趣旨としては目新しいものはなかったのですが、言葉選びや表現が秀逸で読んだ後にスーッと肩が軽くなるような読後感を覚える本でした。
たまにはいつもと少し毛色の違った本が読みたいな、と思ったらぜひ本書を読んでみてはいかがでしょうか。