「気がきく人」になろう!ではなく、「思わせる」というちょっと打算的な香りのするタイトルにひかれて「気がきく人」と思わせる103の心理誘導テクニック」を読んでみました。
相手との共通点を探せ
そんな初対面で「気がきく人」とは、相手との会話の中から、自分と似ている部分や共通する点を、少しでも多く見つけ出そうとする人でしょう。そのほうが早く仲良くなれるからです。これは「共通項・類似性の原理」と呼ばれる心理作用がはたらくからです。
個人的には、これは初対面の人に無意識的にやっていることが多いです。
初対面の人との共通点があると緊張もとけますし、親近感を感じて話しやすくなるので積極的に共通点を探っていくようにすると良いですね。
「困った理由」でワガママを通せ
心理学の有名な実験に「困った理由を告げれば、わがままが通る」というのがあります。 「申し訳ないです。私にとって緊急事態なので、どうか先にコピーを取らせてください」などと頼めば、相手は気の毒に思って、たいてい先を譲ってくれるものなのです。頼まれた相手への助力は、「援助行動」といって、自尊心が満たされるからです。
これはズルイテクニックですよね。
ワガママを言われる側にとってみれば、どんな理由だったとしても自分には関係のないことですから断っても良さそうなものですが、相手の事情をきくと無碍には出来ないと思ってしまうから不思議。
その理由は、どうやら譲った側にも自尊心が満たされるというメリットがあるためのようです。ワガママで無理を通しても相手も喜ぶならwin-winですね。
テクニック的に褒める
自分が選んだスタイルや持ち物には、その人のアイデンティティーが及んでいます。ゆえに、自分の内面や人格をほめられたのと同じように嬉しくさせられます。 また、いつもと違う部分に気づいてくれたことにも感心するでしょう。 自分に関心がもたれていることを、意識させてくれるので気分がよくなります。人に出会った時、用件に入る前に、その人へのちょっとしたほめが入るだけで、ムードは一変するのです。 人は、お世辞だな──と思っていても、ほめられたら嬉しくなるからです。
「褒める」・・・これほど簡単な行動で効果も保証されていることが、こうも難しいと思えるのはなぜなんでしょうね。
「褒める」というのはテクニック的に行うほうが難しいと思うんです。心から良いと思っているものを褒めるのに何の恥ずかしさもてらいも感じませんが、お世辞や嘘でテクニック的に褒めようとするとスムーズにいかず口ごもってしまうものです。
つまりテクニック的に褒めるということは、話術などの口先で褒めるという意味ではなく、どんな人やモノやコトでも良いところを見出せるようになり常に本音でホメられるようになる、ということこそがテクニック的に褒めるということなのではないかと。
お世辞を磨くのか、心を磨くのか。あなたならどちらの手段を選ぶでしょうか。
褒めることで相手を誘導する
このように、実際の行動は駄目なのですが、期待を込めて、つねに先行してほめてあげるようにするのです。ほめを「フライング・ゲット」した人たちは、どうなるでしょうか。期待値を高くもたれた人は、それにふさわしい行動を取るようになっていきます。 これを心理学では、「ピグマリオン効果」とか、「ローゼン・タール効果」「教師期待効果」などと呼んでいます。「気がきく人」が、この効果を使わない手はないでしょう。
これも人間の心理をうまくついたテクニックですよね。
人は誰かに期待されると、その内容に沿った人間になろうとするバイアスが働くようになり、いつしか期待通りの人間になりますよね。誰でもこの効果を利用して「操縦」されたことが一度や二度はあるのではないでしょうか。
肝心なのは「操縦する側」になることなのですが、コレもなかなか簡単そうでできないものです。上司と部下の関係などでよく見られるように、人は自分の期待する行動を相手に取らせたい場合に怒ったり威圧するなどしてしまいがちで、相手に期待する(事前に褒める)ことが簡単にはできません。褒めるよりもプレッシャーを与えるほうを選んでしまいます。
自分が逆に立場になったと考えてみれば結論は明白なのですから、心当たりのある方はムチよりもアメを用いるよう改めるようにしましょう。相手のためではなく「気がきく人」と思われることで自分の人生を向上させるためなんだ、と思えば少しは取り組みやすくなりますよね。
ロゴス・パトス・エートス
人を説得する時に重要な要素として「ロゴス」「パトス」「エートス」の3つがあることはよく知られています(アリストテレスの説得の3要素)。※ロゴスとは、理屈やロジック(論理性)に訴えること。※パトスとは、聞き手の感情に訴えること。※エートスとは、説得する人自身の信頼性に訴えること。 これら3つの要素を踏まえたうえで、古代ギリシャの哲人アリストテレスは、5つのステップで説得すべしと説きました。
①聞き手の注意を引くストーリーやメッセージを提供する。
②解決が必要な課題を提示する。
③その課題を解決する回答を示す。
④回答のメリットを説く。
⑤行動を呼びかける。
引用中では、「ロゴス」「パトス」「エートス」の3つがあることはよく知られています、とありますがまったく知らなかったのでメモしておきます。歌詞などで言葉だけは知っていましたけどね。
ロゴスとパトス=論理と感情というのはビジネスの現場でお客さんの購買意欲を向上させるために意識することが多く既知の概念でしたが、「エートス」の「説得する人自身の信頼性に訴えること」というのが新しい概念でまだ消化しきれていません。
「エートス」の「説得する人自身の信頼性に訴えること」というのは文脈からすると、先述のように相手に期待することを意味するのでしょうか。それとも人間な性善説的な部分についてなのかな?
ともかく、こういう言葉はマーケティングや説得の現場で持ち出すと通りが良かったりするので、販売活動に携わる方は覚えておいて損はないのではないでしょうか。
本書を読み終えた感想としては、自分にテクニックが身についたかどうかよりも、「あ、コレをやられてるなー」という自分の人生において本書中で紹介されているテクニックを巧みに操る人達の存在に気がつきました。
ただ、そういった人をみていると「テクニック」として意識的にやっているようには見えないんですよね。結局のところ「テクニック」とはいうものの心がおいついてないと使いこなせないものなのかもしれません。
テクニックを身につけるために読むこともできますが、周囲の人との相対的な関係性を詳らかにするため、という読み方もできる本ですので興味の有る方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。