400ものプロジェクトを同時進行させるというデザイナー「佐藤オオキ」さんの仕事術本を読んでみました!
盲目的にならない
実際、すでに世の中に出ているものはなかなか合理的にできているもの。バランスがよく、収まりがいいのです。「業界の事情」を汲み取れば、着地点が既存の商品に近づくのは自然なことともいえます。しかし、「人の心に刺さる、どこかに引っかかりのあるデザイン」を生むためには、そのバランスを無視する必要があります。
同じ業界にずっといると慣習的に仕事を行うことが増えてしまい、ことなかれ主義に陥りがちになるので注意したいところですね。
自分にも目を向ける
調子の波を感じ取れるようになるには、常に自分の状態に意識を向けながら仕事に取り組み、その経験を積み上げていくことが必要でしょう。
これは最近私もよく意識するところなんです。自分自身にも気を配って自分が今どんな状態にあるのか把握に努めるということですね。
ビジネスとなるとお客さん第一主義になって提供者たる自分や会社のことをないがしろにしがちなのですが、そもそも提供者が正常でなければ良き製品やサービスを提供することなどできませんよね。
極端さから革新を生む
たとえば私は原稿を書くとき、「2時間くらいかかりそうだ」と思ったら、一度は1時間で仕上げると目標を決めて書いてみます。時間を半分にすれば仕上がる原稿のクオリティは下がりますが、とにかくそのスピード感で文章を考えて書き上げる
〜
極端な目標タイムを設定することは、組織の仕組みを見直すきっかけにもなります。
佐藤さんはあえて「極端」に走ることで、それを機会に新たな仕事の仕方や組織の在り方について見直すことができる、といいます。
悪しき慣習に汚染されてしまった会社などは一度この方法を試してみると良いのかもしれませんね。
経験の熟練と弊害
私は、何事も最初から「できないだろう」と考えるのではなく、「やれるんじゃないか」「やるためにはどうするか」という発想で考えることが大事だと思っています。この考え方は、「少しでもリスクがあるなら、やめたほうがいい」と考える人たちにはなかなか理解されないのですが、可能性を真剣に考えないまま物事を切り捨てるのはとてももったいないことだと思うのです。
これは決して珍しい考え方ではないですが、当該作業への経験値があればあるほどリスクヘッジができるようになってしまい、ロクに検討もせずに切り捨てる部分が多くなってしまいがちです。
仕事が熟練することは悪いことではないですが、それに伴う弊害を知り、常にゼロベースで再思考して見落とされがちなところに目を向けるように心がけたいものです。
すべて言語化・論理化できるわけではない
もちろん決断をするからには私の中でそれなりの理由があるのですが、それがすべてロジカルに説明できるものとは限りません。過去の経験に基づいた判断なら、丁寧に説明すれば納得してもらえるかもしれませんが、新しいクライアントと未経験のプロジェクトに次々と取り組んでいれば、過去の経験則から答えが導けるケースはそう多くないものです。
直感で物事を判断する、というときこえは悪いですが仕事の経験則がそれなりに蓄積されてきたせいか最近、私も切実にコレを思うようになってきました。
ビジネスでは相手に説明する必要があるので考えを言語化して論理的に並べる必要がありますが、自分が言語レベルではないところで感じていることを言語化して論理化してしまうことで、真に感じていたこととの間にズレを生じさせてしまうことが多々あるようになってきました。
言語化による具体化のつもりで抽象化になってしまっている状態です。
自分以外の第三者がいるときは説明の必要性が生じるので難しいかもしれませんが、私はそういう部分をあえて曖昧に保つことが逆に一番具体化された状態と思うのであえてそのままにするようにしています。
羞恥心と恐怖心
羞恥心や恐怖心というブレーキを外すと、仕事のスピードはぐんぐん上がります。失敗をどんどん重ねられるので、そこから多くのことを学べますし、失敗したからといっていちいちクヨクヨすることもありません。こうして経験を重ねていけば、さらに仕事の質やスピードが上がっていくというサイクルが生まれます。
人にモノを教える仕事をしていたり、こんなブログをやっているといかに羞恥心と恐怖心が私たちの人生に悪影響を与えるか感じる機会は多いです。
例えばこの読書メモだって、周囲への羞恥心や恐怖心があると細かい表現や誤字脱字に気を使って数時間を費やして書くハメになってしまいます。結果、毎回そんなことに気を使っていたら書くのが嫌になってブログなんて続けられなくなるのは必然というものです。
私たちは物書きを生業としているわけではないのですから、自分の思う文章力の10%ぐらいで十分ブログ記事なんて成立します。
羞恥心や恐怖心を「完璧主義」と称していつまでも物事をはじめようとしない自分の弱さから逃げる人も多い気がするので、羞恥心や恐怖心の罠に自分が囚われてしまって不毛な人生を歩んではいないか確認してみてください。
今やらないことは未来もやれない
人は大きな目標を持ったとき、「そのために毎日こつこつ努力して一歩ずつ階段を上っていこう」といった思考になりやすいものでしょう。高い志を持つ若手デザイナーも、多くは「とりあえず今は目の前にある仕事をしっかりやって、いつか夢を叶えたい」と言います。これはとてもよいことを言っているように聞こえますが、私の考えはまったく逆。もしも10年後にやりたい理想の仕事があるなら、どんなに無理をしてでも、それを今、実現したほうがいいと思うのです
〜
たとえば、「いつかはこんなデザインの家をつくってみたい」とアイデアを温めている建築家がいるとします。「夢を叶えるためにこつこつ与えられた仕事をしよう」というスタンスでいれば、つくるものはそこそこ無難なデザインに落ち着くことでしょう。そうやって無難なデザインをずっと続けていると、クライアントなど周囲の人は「この人は無難にデザインしてくれる人だ」と考えるようになります。心に秘めた夢のプランがどんなにすばらしいものであっても、そのことは周囲には伝わりません。このように、「この人は無難なデザインをする人」という印象を一度周囲に与えてしまうと、10年後に特別な仕事をやらせてもらえなくなってしまいます。
〜
自分が携わった仕事は、自分の未来を左右します。だからこそ、意地でもやりたいと思うものがあるなら、どんなに時間やお金がかかっても、それをやり遂げたほうがいいと思うのです。たとえ借金をしてでも、自分が「これだ」と思うものを実現できれば、その作品を見た人が周囲に集まるようになります。そうなれば、徐々に自分のブランドがつくられていくことでしょう。
少し長いのですが、私が本書の中で一番共感したところなのでメモしておきます。
前項にも通じる部分なのですが、結局のところ人は逃げたがりなのです。そして大半の人はそんな逃げたがりの自分を誤魔化しながら生きて向き合うこともせずに日々を淡々と過ごしてしまうのです。
「将来の夢や目標」には甘美な響きがあり、その理想が崇高であればあるほど現状を我慢して好きでもない作業をやり続けることを肯定してしまいがちです。結果、その我慢していた仕事が熟練してしまい余計にその仕事から離れがたくなってしまうのです。
未来にやりたいことがあるのであれば、うまくやれずに周囲から誹謗中傷されようが罵倒されようが今から泥臭くはじめるしかないのです。それしか未来を切り拓く手段はないと肝に銘じておきたいものです。
着地点はあるか
これは、デザイン以外の仕事にも当てはまる考え方でしょう。課題の分析ができておらず、「着地点」がわからないまま仕事を進めれば、スピードを上げることもクオリティを高めることも望めないのです。打ち合わせで担当者から「最終的に社長がどう判断するかはわかりませんが、まずはつくってみてください」と言われることもあります。これも、うっかりそのまま進めると頓挫することが多いパターンでです。
これもよく陥りがちなところで「まずはじめてみよう」という名の下に着地点がないままに進んでしまい気がつけば成果物がまったく意図せぬモノになってしまうパターンですね。
この状況に陥ってしまう最たる理由は「面倒くささ」だと感じています。プロジェクトに対して参加者すべてが納得のできるゴールを設定することは難しく、ゴール設定の会議をして結論が出ぬまま終了時間を迎えてしまうと「じゃ、まずは作ってみてから」ということで場を解散させることが多いのです。
プロジェクトにおける重要度からいけばゴール設定が「面倒で大変なモノ」であることは必然といえます。その必然さに目を背けることなくしっかり向き合って着地点が見えぬままパラシュートで降下するようなマネはしないようにしたいものです。
仕事の選別基準
しかし、依頼があれば何でもお引き受けするというわけではありません。「自分以外の人がやったほうが、よりよい結果になるだろうな」と思われる案件や、意欲がわかない仕事は、最初に依頼があった段階でお断りするようにしています。
〜
デザインに限らず、どんな仕事でも「周囲からの期待に応える」ことは大切でしょう。しかし、常に頭の中で「自分だからこそ応えられる期待とは何なのか」を考えることも必要です。
なんでもかんでも仕事を引き受けていたのでは効率的に業務をこなすことはできませんし、クオリティにバラつきがでてしまいがちです。
でもこの辺は経験がモノをいうところでもありますよね。数多くの失敗をしなければ「自分が最もよく応えられる期待」を選別できるようにはなりませんから。
発想は閃きではなく解
アイデアの発想は、たとえていえば算数の問題を解くようなものです。1週間かけて解いても5分で解いても答えが同じなら、5分で解いたほうがいいに決まっています。かけた時間によって、答えの質が変わるわけではありません。
佐藤オオキさんの他に佐藤可士和さんなどの腕の良いデザイナーさんも似たことをいいますよね。
結局のところデザインとはアーティスティックな感性から行われるものではなく、課題に対する論理的な帰結であり「ソリューション」であるべきということですね。
ゴールは点ではなく幅を
なお、ここまでゴールを明確にすることの重要性をご説明してきましたが、ゴールは必ずしも一つの「点」ではなく、ある程度の「幅」があるものである、と認識しておいたほうがよいでしょう。プロジェクトを進めていけば、途中でトラブルが起き、当初目指した通りのデザインが実現できなくなってしまうこともあるものです。そのような場合は、ゴールの幅の範囲内で落としどころをさぐり、修正していく必要があります。このようにいうと「妥協するのか」と思われるかもしれませんが、本質的なゴールを最初に設定できていれば、その「幅」から外れないギリギリのラインを追求することができます。
これは私にとっては新たなモノの味方でした。
たしかにゴールは点ではなく幅、つまりある程度の範囲があるものと認識するとプロジェクト進行が柔軟になり楽になれますね。
今後は幅を持ったゴール設定の仕方を探っていきたいです。
まずは最小単位から解決する
アイデアを生む技術として、私がよく使う方法の一つに「できるだけ課題を細かく分割する」というものがあります。プロジェクトで解決すべき課題は、多くの場合、一つではありません。しかし、複数の課題を一気に解決できるアイデアを考えようとするのは難しいもの。そこで、まず課題を分割し、「一つの課題だけを解決するならどうするか」を考えてみるわけです。
大きな課題にいきなり取り組んでしまうと、あまりのサイズ感に思考停止に陥ってしまうことがあります。
そんな時はまず課題を最小構成単位に分割してひとつずつ解決を試みるというアプローチが有効ですね。
これもよくいわれることで決して珍しいことではありませんが今一度確認しておきたいのでメモしておきます。
ユーザーも提供者も
デザイナーとして仕事を始めた頃、私はユーザーのメリットにばかり意識が向きがちでした。一般的にも、「ユーザーの利益を第一に考えるべきだ」ということはよくいわれますし、ユーザーに喜んでもらえるアイデアであることは絶対に必要です。しかしプロジェクトを完遂して当初の目的を実現するためには、ユーザーの声と同じくらい、現場やトップの思いにしっかり耳を傾けることも必要なのです。
これはブログで例えるとわかりやすくて「お小遣い稼ぎ」という理由でブログをはじめる方の大半はこの状態に陥ります。
多くのブロガー本などでは「閲覧者のメリットになる記事を書け!」と指南するものが多いので、盲目的に相手のためになりそうな「◯◯をするための◯◯の方法」のような記事を書くわけですが、そこに「自分が本当にやりたいこと」の視点が抜けているので決して長続きしないのです。
この例の場合なら「お小遣い稼ぎ」をテーマにしたブログ以外でこの人がブログを続けられるわけがないのです。
ユーザーのメリットはもちろん大事なのですが、それ以前にまずは提供者たる自分自身をよく観察して自分の思いと矛盾することのないようにシステム構築することが物事がうまくいくコツなのではないでしょうか。
目標設定のコツ
「頑張れば乗り越えられそうな課題」を与えられたとき、一番やる気が出るということ。アイデアを考えるとき、私は「どう頑張っても実現するのは無理だろう」というようなハードルが高すぎるものや、ちょっと手を動かせばすぐ実現できるようなものではなく、やりがいを感じられつつ「頑張れば必ずできる」と思える水準のものにしています。
これも幾度となくビジネス書で目にしてきたことですが、この「頑張れば乗り越えられそう」をやるためには、前項とも共通する部分ですが「自分」をよく知らないとなかなか難しいです。
自分を過小過大評価した見積もりではうまくいくわけがありませんから、やはりまずは提供者たる自分たちのことをよく知るように努めることが、結果としてお客さんのためにもなるということですね。
おせっかいの贈り方
プレゼントは、できれば相手が好きなものや今持っていなくて困っているもの、しかも「そうそう、自分では気づいていなかったけれど、これがほしかったんだ」と思ってくれるものが理想的です。そんなものを渡せたら、きっと相手はびっくりして、ものすごく喜んでくれるに違いありません。「何を贈るか」だけでなく、相手が気持ちよく受け取れることも重要です。
〜
こうして振り返ってみると、クライアントにとってよかれと思うことをどんどんやっていくことが、結果的に仕事の領域を広げることにつながっている気がします。
職域を越えての提案などは例え自分がお客さんのためになると思っていても躊躇しがちになってしまいますが、お客さんに対する自分の位置関係からしか発想できないものというのはあると思いますしどんどんやっていったほうが良いというのは賛同できますね。
ともすれば「おせっかい」と言われそうで恐怖心がないといえば嘘になりますが、「何を贈るか」だけでなく、相手が気持ちよく受け取れることも重要です、という箇所にハッとさせられました。
これまで提案にばかり気を取られて相手が気持ちよく受け取れるかどうかまで気を回すことができていなかったので、今後は相手にとって「おせっかい」にならないような贈り方をするように心がけたいと思います。
報酬は前提ではなく結果
極端に聞こえるかもしれませんが、私は「クオリティだけを追求していればよい」という考えで仕事をしています。クオリティを上げるためならお金を出すことを惜しみませんし、「これはいくらの仕事か」「これをやってお金になるのかどうか」などと考えながら仕事をすることもありません。
一流の人は皆、口を揃えて必ずこういいますね。結局のところ「お金」を基準に仕事を回すことが一番お金に縁遠くなってしまうのでしょう。
私たちは今、自分にできることに全力で目を向けていれば、自然にそれに見合った報酬が調整されるのだと思います。
参加者をまとめる概念
「プロジェクトに関わるすべての人がベクトルをそろえられるようなコンセプト」ともいえます。プロジェクトを最初から最後まで貫くコンセプトを設定していることこそ、ネンドのデザインの特徴といってもいいかもしれません
私が考えるコンセプトとは、「電話で誰かに伝えられるくらいシンプルな短い文章でいえるもの」「電話で話して『それ、面白そうだね』と言ってもらえるようなもの」です。これが共有されてさえいれば、企画担当者、営業担当者、職人さんなど価値観や立場がまったく異なる人たちが集まっても、短時間で同じ方向に進んでいくことができます
先述の「ゴールの設定」にも相通じる部分がありますが、やはりプロジェクトに参加する人間を統一するための概念がなければ成功はおぼつかないということでしょう。
ビジョン、ミッション、コンセプト、ゴール、目標、言葉にすると色々とありますが、これなしではムリ・ムダ・ムラが発生しやすくなり組織やプロジェクト運営が上手くいかなくなるのは必然です。
みんなが共感できる指針をひとつ定めてから船出をするようにしたいものです。
本書は私にとってはこれまで得た知識の再確認という箇所が多かったように思います。
読みやすくて一気にダーッと読んだのですが、後から振り返ったらマーキングした箇所が多く引用もすごい数になってしまいました。読んでいる最中はまったくそんな気はしていなかったんですけどね^^;
「デザイナー」というよりは「経営者」の方にオススメの本なので興味のある方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。