秋田県泉北市にある田沢湖は日本で一番深い湖。
その最大深度は423.4mにも及ぶそうです。
湖畔には金色に輝く「たつこ像」とよばれるブロンズ像があります。
田沢湖には「たつこ伝説」とよばれる、若さと美貌に執着しすぎた女性のお話が伝わっているそうです。
田沢湖のほとり神成村に辰子(タッ子、または金釣(カナヅ)子ともいわれる)という名の娘が暮らしていた。辰子は類い希な美しい娘であったが、その美貌に自ら気付いた日を境に、いつの日か衰えていくであろうその若さと美しさを何とか保ちたいと願うようになる。辰子はその願いを胸に、村の背後の院内岳は大蔵観音に、百夜の願掛けをした。必死の願いに観音が応え、山深い泉の在処を辰子に示した。そのお告げの通り泉の水を辰子は飲んだが、急に激しい喉の渇きを覚え、しかもいくら水を飲んでも渇きは激しくなるばかりであった。狂奔する辰子の姿は、いつの間にか龍へと変化していった。自分の身に起こった報いを悟った辰子は、田沢湖に身を沈め、そこの主として暮らすようになった。
田沢湖 – Wikipedia
さすが日本一深い湖、意味深な含蓄のあるお話です。
自分の美しさに気づいてしまったばかりに欲がでてしまった辰子。
なまじ気がつかなければ龍になってしまうこともなかったのでしょう。
それは、持たなければ失うこともない、という真理。
持ってしまえばもっと欲しくなり、さらに持てばさらに欲しくなり、欲望はとどまることを知りません。
このお話からは、欲望のままに生きるのではなく、謙虚であり続ける大切さを感じさせられます。
辰子の母は、山に入ったまま帰らない辰子の身を案じ、やがて湖の畔で辰子と対面を果たした。辰子は変わらぬ姿で母を迎えたが、その実体は既に人ではなかった。悲しむ母が、別れを告げる辰子を想って投げた松明が、水に入ると魚の姿をとった。これが田沢湖のクニマスの始まりという。
北方の海沿いに、八郎潟という湖がある。ここは、やはり人間から龍へと姿を変えられた八郎太郎という龍が、終の棲家と定めた湖であった。しかし八郎は、いつしか山の田沢湖の主・辰子に惹かれ、辰子もその想いを受け容れた。それ以来八郎は辰子と共に田沢湖に暮らすようになり、主のいなくなった八郎潟は年を追うごとに浅くなり、主の増えた田沢湖は逆に冬も凍ることなくますます深くなったのだという。
田沢湖 – Wikipedia
それはそれで幸せになったみたいです。塞翁が馬、的なお話でしたか。
まさかのラブラブパワーで湖が凍ることもなくなったというわけで、せっかく感心した気持ちがすっかり迷子。
伝説はさておき、金色のたつこ像は、濃藍色の田沢湖によく映えて美しさが際立っています。
この日は今にも降り出しそうな天気でしたが、曇り空であっても濃藍色の湖面の美しさは十分わかります。
むしろ曇り空の鉛色と、静かに波打つ藍色の湖面が、先述の伝説と相まって湖の神秘性を増して感じさせてくれました。
思いのほか濃藍色で、思いのほか金色。
事前に写真で見知っていたものの、実際に足を運んでみると田沢湖もたつこ像も写真には映らぬ美しさがありました。
人生で一度はこの美しい湖と像を観に行って欲しいと思います。