スヤスヤと眠る可愛らしい姿で人気の眠り猫。
これまで画像でしか眠り猫を見たことがない人は、日光東照宮に実際に行くとその小ささに驚かされるはず。
今回は日光東照宮に行ってわかった眠り猫の真実と、眠り猫の意味などについて書いてみたいと思います。
眠り猫のサイズ
眠り猫を写真で見ると、大抵は上画像くらいか、さらに眠り猫によった写真が多いと思います。
しかし眠り猫の実際のサイズは、
こんな看板を立てなければ気づかれぬほど、
小さいのです。
全長21cm。
眠り猫がこんなに小さな彫刻だったとは。
眠り猫の場所
眠り猫は、徳川家康のお墓(奥社 御墓所)へと続く奥社参道の入り口である坂下門に設置されています(画像中央上)。
坂下門は人通りが多く、足をとめて肉眼で眠り猫をじっくり見るのは難しいです。
さらに眠り猫は高いところに設置されているので、子どもや背が低い方だとちょっと見づらいです。
眠り猫は小さくても国宝
眠り猫はその小さなサイズにも関わらず国宝に指定されています。
なぜこんなに小さな眠り猫が国宝に?
国宝に指定されるほどの価値とは?
色々と調べてみましたが、一番それらしい理由は、眠り猫の作者が伝説の彫刻職人「左甚五郎」である、ということでした。
眠り猫の作者:左甚五郎
左 甚五郎(ひだり じんごろう、ひだの じんごろう)は江戸時代初期に活躍したとされる伝説的な彫刻職人。落語や講談、松竹新喜劇で有名であり、左甚五郎作と伝えられる作品も各地にある。講談では地元の大工に腕の良さを妬まれて右腕を切り落とされたため、また、左利きであったために左という姓を名乗ったという説もある。
日光東照宮の眠り猫をはじめ、甚五郎作といわれる彫り物は全国各地に100ヶ所近くある。しかし、その製作年間は安土桃山時代 – 江戸時代後期まで300年にも及び、出身地もさまざまであるので、左甚五郎とは、一人ではなく各地で腕をふるった工匠たちの代名詞としても使われたようである。
左甚五郎 – Wikipedia
左甚五郎は、特定の誰かを意味するのではなく、腕のよい彫刻職人の代名詞だったようです。
眠り猫は左甚五郎作といわれていますが、一方で作者不明という記述をいくつか見かけたのはそういうことですか。
そんな曖昧な存在を根拠に、眠り猫が国宝指定されたというのは、信じがたいような。
さらに調べてみたところ、左甚五郎と眠り猫に関する面白い伝承を見つけました。
昔、左甚五郎という人がいて、旅をしていたところ夜に山で迷ってしまった。山奥だったために人家は見受けられなかったが、歩いているうちに薄明かりのついた一軒の家を見つけた。軒先にでも泊めてもらおうと思いその家を訪ねると、家の中から老婆が出てきて快く家に入れてくれた。そうして甚五郎は自身の彫り物を見せたところあまりにも立派だったため、日光に行き東照宮の建築に携わるよう勧められ、参加した。そうして彫った猫はあまりにも立派だったために夜な夜な抜け出しては悪さをしたため、眼を塞ぎ眠り猫にしたという。
眠り猫 – Wikipedia
彫刻が夜な夜な動き出すとは面妖な。
立派に掘られても悪さをするあたりはニャンコっぽくていいですね。
おもしろい逸話ですが、眠り猫が国宝に指定された理由には関係はなさそうです。
色々調べてはみましたが、結局のところ眠り猫が国宝に指定された理由はわかりませんでした。無念。
眠り猫の意味
眠り猫が日光東照宮に設置された意味については、たくさんの説があります。
実は寝てない説:徳川家康を守っている
眠り猫は実は寝てはおらず、徳川家康を守るために眠っているとみせかけて、いつでも飛びかかれる姿勢をしているという説です。
その根拠として眠り猫の前脚部分は踏ん張っているように見えるといいます。
確かに角度を変えて眠り猫を見てみると、前脚は踏ん張っているようにも見えます。
平和の象徴説:雀の彫刻が意味するもの
写真を撮ってこれなかったのですが、眠り猫の裏側には「雀の彫刻」があります。
雀にとって猫は天敵。
その天敵が近くにいるにも関わらず、雀が安心して飛べるくらい世の中が平和であることを意味しているという説です。
日光東照宮の彫刻の大半は平和を象徴していることから、眠り猫もそうではないかと考えられているそうです。
長く続いた戦国時代に終止符を打ち、世を太平に導いた徳川家康らしい説だと思います。
その他の説
他には、禅問答の「牡丹花下眠猫児」にならったものだとか、取り外しができるようになっているので本来は違う場所にあった、などの説があります。
知名度の高さと実物の小ささのアンバランスさに目がいってしまいがちな眠り猫ですが、夜な夜な抜け出すという逸話も頷けるほど精巧で見事な彫刻でした。
眠り猫は2016年に修復されたので、まだ色鮮やかで綺麗な状態です。
陽明門同様、何年か経てばまた色褪せてくるでしょうから、綺麗な状態を見たい人は、今のうちに日光東照宮まで足を運んでみてはいかがでしょうか。