かなり落ち込んでいます。
10月1日に発売されたRICOHのコンデジGRIIIx。
GRIIIに思いっきりハマっていた私が、GRIIIxを予約して発売日に入手したのは必然でした。
GRIIIxが届いてから今日まで、GRIIIとGRIIIxの2台を持っていろんなところに出かけました。温泉旅行にも行ってきました。
その結論が冒頭です。かなり落ち込んでいます。
GRIIIx、正直、いらなかったなぁ………。
もし買ったときのお金が全額返ってくるなら、今すぐ手放したい。
マップカメラでGRIIIxを売ると、3万円ほど買った値段より安くなることが判明しました。発売したばかりのカメラなのに。死にたい。
今ならわかります。なぜGRというカメラが、10年以上という長きにわたって28mm(フルサイズ換算)という画角にコダワリ続けてきたのか。なぜ世界一使われているスマートフォン「iPhone」のカメラアプリのデフォルトが28mmを採用しているのか。
シンプルに言ってしまえば、それは「使いやすい」から。28mmという画角は、誰でも気軽に写真を撮りやすい画角だからなのだと思います。それが痛いほどわかりました。もう痛くて仕方ない。
GRIIIxの40mmへの挑戦は素晴らしいと思います。伝統から離れるのは大変な勇気と覚悟がいります。
それを理解した上で、いち消費者の感情的で勝手な感想を言わせてもらうと、
「GRIIIx、本当に必要だった?」
と、いうのが本音です。
「GRIIIxが悪いカメラなのではなく、私とは合わなかっただけのこと。Not for you。私のためのカメラではなかった。」
と、本当は穏やかに言いたい。けれど、私にとってこの落胆は、そんな上辺の取り繕いよりも、本音の発露でなければ鎮まりそうにないんです。
「GRIIIとはまた違った使い方ができます。ぜひGRIIIを持っている人も、GRIIIxを購入して2台持ちで楽しんでみてください」
……本当にやってみたのか、と? 動画や記事を作るためだけでなく、いちユーザーとしてGRIIIとGRIIIxを2台持ち出し、撮り歩いてみたのか、と? 実際にやってみた私の感想としてはGRの2台持ちはストレス以外のナニモノでもなかったです。
GRIIIxはユーザーがGRブランドに期待する要件を満たさないカメラ。
それが私の結論です。
あまりの落胆ぶりに感情をぶちまけてしまいました。
今回は、私がGRIIIxに感じたことを、GRIIIと比較しながら書いてみたいと思います。GRIIIとGRIIIx、どっちを買うべき? とお悩みの方の参考になれば幸いです。
GRIIIxの40mmはまったく気軽じゃない
まったく気軽じゃない。
結局、これがGRIIIxが好きになれないもっとも大きな理由です。
GRIIIxのフルサイズ換算40mmという画角は、GRIIIの28mmに比べると気軽さ、気楽さに劣ります。GRIIIならそのままの立ち位置で撮れたモノが、GRIIIxだと後ろに下がらないと撮れません。
旅行に持っていくならGRIIIxよりは断然GRIIIのほうが向いています。私はGRIIIとGRIIIxの2台を持って温泉旅行に行ってきましたが、旅行初日からGRIIIxのわずらわしさにやられてしまい、旅館の窓からGRIIIIxを投げ捨ててやろうかと思いました。
旅館の夕食って大きなテーブルに品数をたくさん並べてくれますよね。目にも鮮やかで、被写体としても優秀です。
……入らないんです。GRIIIxの40mmだと、自分の席に座ったままでは夕食が画角に入りきれません。席から立ち上がり、ほかの宿泊客の視線を感じつつ撮影してようやく食事全体が撮れます。
宿泊した部屋を撮影しようにも、GRIIIxの40mmだと部屋全体は撮れません。GRIIIの28mmでも狭さを感じるくらいですから仕方がありません。GRIIIxだと、どうしても部屋の一部を切り取るカタチになります。
旅行においてGRIIIxは、GRIIIに比べて面倒くさくてわずらわしかったです。旅行で初めて訪れた場所というのは、見るものすべてが珍しく基本的には広い範囲を写真に収めたいものですよね。まさか初めて行った場所で望遠レンズを構える人はいないでしょう。基本的には広く撮れる広角レンズを選ぶと思います。
GRIIIxの40mmは準広角〜標準に属しますが、広角のGRIIIと比べると撮影範囲はかなり狭いです。旅先の風景や珍しいものを収めようとすると、どうしても自分が後ろに下がらざるをえません。それが本当に面倒で、わずらわしくて。ひとり旅ならともかく、同行者がいる旅の場合は、その場に同行者を待たせて自分は後ろに下がって撮影作業をしなければなりません。本当に申し訳ない。
これがGRIIIの28mmだとポケットから取り出してその場でパシャッ!で大抵のものは希望どおりに撮れます。それは個人の視野の問題、40mmの画角感の問題という人もいるかもしれません。けれど、旅先のように初めていった場所、不慣れな場所では、人は危険回避のために基本的には視野を広くとるものです。その視野からするとGRIIIxの40mmという画角は狭く、GRIIIの28mmという画角は広めにとった視野にマッチする相性のよい画角だと思いました。
結局、旅行通算での撮影枚数は、GRIIIが9割、GRIIIxが1割でした。買ったばかりで新しいカメラを使いたくてうずうずしているときにこの数値は驚異的といえます。GRIIIxのシャッターを押すたびに、苦虫を噛み潰すような歪んだ表情をしていたと思います。おかしいですね、40mmは28mmに比べると歪まないはずなんですけどね。
無論、このあたりは旅の目的にもよると思います。撮影を目的とした旅であれば、GRIIIxも使いどころがあるでしょう。私の場合、旅行は遊びに行くのが主目的であり、カメラはそのお供、サブミッションです。
話しが細かくなりつつありますが、さらに細かいついでに言わせてもらうと、GRIIIxの40mmはGRIIIの28mmよりもブレが目立ちやすく、暗所や動体に弱いカメラです。これはGRIIIxだけに限ったことではなく、画角が狭くなればなるほど手ブレや動体ブレは大きくなるのは必然です。
旅先では普段なら撮らないような暗所での撮影も多くなります。どうして旅館は薄暗くて良い雰囲気なんでしょうね。どうして夜の温泉街は素敵な雰囲気なのでしょうね。どうしてISO感度が上がって写真がノイズだらけなんでしょうね。
GRIIIもGRIIIxもAPS-Cセンサーを積んでいるとはいえ、高感度耐性に優れているわけではありません。暗いところではあっという間にISO感度が上がってノイズがたっぷりのったザラザラ写真を量産します。それが嫌でISO感度を下げれば、こんどは手ブレがこんにちは。いや、こんばんは。このような旅先の事情をふまえても、旅行にはGRIIIのほうが向いていると思います。
結局、多くの人がGRを買う理由は「気軽に高画質」ではないでしょうか。ポケットからサッと取り出し、パッと撮る。そのためのコンパクトで軽量なカメラだからこそGRが選ばれているわけです。
なのにGRIIIxは、40mmという画角を選んだことで気軽さを失い、じっくり撮るのに向いているカメラになりました。でも、じっくり撮るのであれば、ほかのカメラでいいんですよね。GRでなくてもいい。
40mmという画角が悪いわけではありません。問題は、これまでRICOHが培ってきた「GR」というブランドに、40mmという画角はあまりにも相性が悪いのではないか? ということです。
結局、GRIIIxは、カメラの外観や仕様・機能の共通性から「GRIII」の名前を引き継いで「GRIIIx」と名付けられてしまったのが問題なのだと思います。ユーザーにとってはそこじゃない。ユーザーはカメラの材質や仕様に「GR」を感じるのではなく、使い勝手やフィーリングに「GR」というブランドを感じるのではないでしょうか。そしてGRIIIxは、カメラユーザーにとって、もっとも大切な「撮影体験」において、従来のGRの撮影体験とはほど遠い、別のカメラの撮影体験になってしまった。
これはGRIIIxにとっても気の毒で不憫な話です。GRではない新しいカメラブランド、日常スナップではなく、作品撮りに向いたプレミアムコンパクトのようなカタチで世に送り出されていたとしたなら。私のような勘違いしたユーザーに文句をいわれたりすることもなかったのかな、と。
GRIIIとGRIIIxは撮影範囲が被っている
GRIIIとGRIIIxのクロップも含めた撮影範囲は似ています。
GRIIIとGRIIIx、クロップも含めた両機の撮影範囲は以下のとおりです。
GRIII:28mm、35mm、50mm
GRIIIx:40mm、50mm、71mm
GRIIIとGRIIIxは、画角がほぼ被っているんですよね。
GRIIIの35mmと50mmは、GRIIIxの40mmと50mmをほぼカバーしているといえます。
もちろんGRのクロップはズーム機能ではないため、撮影した写真の画素数に違いがでます。クロップ機能を使えば画素数は減ります。
しかし昨今のPhotoshopやLightroomに搭載されたソフトウェア処理によるアップコンバート機能(超解像度)を使えば、画素の問題はクリアできます。厳密なことをいえば、アップコンバートしたものは画質が劣りますが、一般的な用途で気になるようなレベルではありません。そしてソフトウェア処理はこれからも精度がどんどん向上していくわけです。
となると、GRIIIxがGRIIIに勝る部分がないんですよね。GRIIIxの望遠端71mmも、GRIIIで撮影した写真をトリミングして超解像度をかける方法で対応ができるわけです。その点、GRIIIはGRIIIxでは絶対に撮影できない28mmの広角域をカバーするわけです。GRIIIを選ばない理由がありません。GRIIIxに「40mmか・・・」と思った人は多いはずです。きっと定番画角の「35mmだったらな〜」「50mmだったらな〜」と思った人は多いのではないでしょうか。GRIIIならその両方があります。35mも50mmも、さらにGRIIIxでは対応不可能な28mmの広角も付いてきます。書いていて思いましたが、GRIIIってなんてお得なカメラなんでしょうね。私が惚れ込むのもうなづけるというものです。うんうん。
以下、GRIIIとGRIIIxの撮影範囲の比較写真を置いておきます。
デフォルト画角。
GRIII(左)28mm。GRIIIx(右)40mm。
一段クロップした画角。
GRIII(左)35mm。GRIIIx(右)50mm。
二段クロップした画角。
GRIII(左)50mm。GRIIIx(右)71mm。
GRIII 28mm。
GRIII 35mm。
GRIII 50mm。
GRIIIx 40mm。
GRIIIx 50mm。
GRIIIx 71mm。
いくらコンパクトでも2台持ちは邪魔くさい
私もそうでしたが、GRIIIに感動して、GRIIIxを買って2台持ちしようと考える人がきっといますよね。
実際やってみると、いくら軽量コンパクトなGRでも、2台持ちはかなり邪魔くさいです。パンツの左ポケットにGRIII、右ポケットにGRIIIx。さすがに重たいですし、歩きにくい。
GRIIIの重さは254.5g。
GRIIIxの重さは262.5g。
GRIIIとGRIIIxを合わせると、重さは517gになります。
「500mlの中身が入ったペットボトル」をポケットに入れて歩くのを想像してみてください。どれだけ邪魔くさいか、おわかりいただけるかと。
というわけでGRIIIとGRIIIxをカメラバッグに入れて持ち出します。
コンパクトとはいったい……と思いながらもカメラバッグに2台を入れて持ち運ぼうと試みたわけです。すると何が起こるのか。
カメラバッグからGRIIIxをサッと取り出してパッと構える。
うーーーん、こっちGRIIIだったわ。
カメラバッグからGRIIIをサッと取り出してパッと構える。
うーーーん、こっちGRIIIxだったわ。
そう、まったく同じ見た目を採用したカメラの悲劇です。パッと見でGRIIIかGRIIIxなのかわかりません。もうこれがわずらわしくて、わずらわしくて。
RICOHさんには間違っても公式として2台持ちの話しはしないでもらいたい。こんなに紛らわしくて2台持ちに適さないデザインもないでしょう。本当にRICOHの人は、GRIIIとGRIIIxの2台を一緒に持ち出すということを一切していないのではなかろうか。自分でやってみれば、2台持ちがいかにユーザーにとって不快な体験になるかを身をもって知れたはずです。
私の体験で、2台持ちで良かったことといえば、超絶減りやすいGRのバッテリーの減りが遅くなることくらい。あとはGRIIIとGRIIIxのことを知らない人に、「GRを増やすドッキリ」を仕掛けて大層おどろかれたこと。普通の感覚で考えれば、同じ外観のカメラを2台持ち歩く人なんていませんから驚かれて当然です。いま思えばあれがGRIIIxがもっとも活躍した瞬間でした。
買った気がしない
これはなかなかの衝撃体験ですよ。ある意味では、面白い体験です。
GRIIIxは価格が12万円くらいしますが、この金額の購入体験としてはかつてないものがありました。
普通、このくらいの値段を出せば相当な買い物体験になりますよね。冷蔵庫や洗濯機だったら、しばらくは新製品の余韻にひたれることでしょう。
なのにGRIIIxときたら、まったく新鮮さがない。感覚的にはすでに持っているもの(GRIII)をもう一度買っただけ。まったく買った気がしない。カメラ本体もメニュー画面もすべて一緒。電源を入れて背面液晶を見てようやく違いがわかります。はじめてGRIIIを手にしたときの高揚感。あれがまったくない。どこにも見当たらない。
それを承知の上でGRIIIxを買ったつもりでしたが、これはなかなか凄まじい体験です。人生でこんな体験をしたのは初めてかもしれません。
GRIIIxはパッと見でわかるレベルで本体デザインを変えるべきだったのではないでしょうか。どこか一部の色がGRIIIとGRIIIxでは違うとかでも良かったかもしれません。GRのデザインは、洗練された素晴らしいデザインだとは思いますが、GRIIIxを買い増しする人の購入体験までは考えられていなかったのかな、と。蒸し返しになっちゃいますが、やはりGRIIIxはGRではない別のカメラとして販売されるべきカメラだったと、こんなところでも思わずにはいられません。
GRIIIとアダプターが共有できない
これが不思議ですよね。GRIIIという名前を共有したカメラなのに、GRIIIxではこれまで発売されたGRIII用のアダプターなどは使えません。GRIIIとGRIIIxでアダプターを共有できないんです。
左はGRIII、右がGRIIIx。
GRIIIxのほうがちょっとだけレンズ部分が突き出ているのがわかります。これがアダプターが共有できなくなってしまった理由です。
アダプター装着部分を保護するリングも、GRIIIとGRIIIxでは高さが異なります。せっかく買ったGRIII用のアクセサリが使えず、またGRIIIx用に買い直さなければならないというモヤモヤ。いや、だからGRIIIxはGRIIIというカメラ名を共有せずにいれば………。
GRIII用のシルバーリングを、GRIIIxでは使えないもどかしさ。ちょっと派手なので、使用頻度が少なくなりそうなGRIIIxに装着して、少しでも2台の使い分けを快適にしたかったんですけどね。
ちなみに余談ですが、このシルバーリングはNiSiのGRIII用のアダプターを買ったらオマケで付いくるものです。アダプター本体がRICOH純正よりも安いのに、リングアダプターが付いてくるのでお得感があるのでオススメです。
オーバーヒートで電源が落ちやすい
GRIIIxが届いた初日、秋だというのに外気が30度くらいの日中に、GRIIIxだけを持ち出して外で試し撮りをしていたときのことです。温度計マークが点灯し、GRIIIxがオーバーヒートして電源落ちしてしまい、撮影ができなくなりました。電源を入れてもまたすぐに落ちてしまう。そのくり返し。
これが数百枚ほど撮り続けた結果というならわかりますが、撮影枚数が100枚いくかいかないかぐらいでオーバーヒートが発生しました。個体差の可能性もありますので一概にはいえませんが、GRIIIxはGRIIIよりも熱を持ちやすい気がしました。
まとめ:GRIIIxはGRじゃないと思って買えばいいのかも
結局、私が感動したGRIIIの良さを、GRIIIxに感じることは今日まで一度もありませんでした。
この記事でさんざん言ってきたことの繰り返しになりますが、GRIIIxは、本当にGRなのでしょうか? ブランドのようなカタチないものを一般論として語るナンセンスを承知で言わせてもらえば、これは大勢がGRというブランドに求めるものとは違うカメラだと思いました。RICOHさんは、なぜ40mmという画角を選んだのでしょうか。それがGRブランドに適した選択だったと思っているということでしょうか。邪推ですが、私には「技術的にできるからやった」という理由で作ったように思えてなりません。
カメラ歴の長い人はきっとこうおっしゃるでしょう。「40mmという画角の時点で気づけよ」と。
おっしゃるとおりです。私もフルサイズで40mmレンズをいくつか使ってきました。40mmは気軽・気楽というよりは、しっかり撮るのに向いてくる画角になってきますよね。でも、GRIIIにあまりにも感動しすぎた私はこう思ってしまったんです。「あのGRブランドの40mm。それはフルサイズの40mmとはまた違った撮影体験があるのだろう」、と。そんな激しい思い込みをしてしまうほどに、私にとってGRIIIというカメラは人生最高のカメラなんです。そしてその強い思い込みゆえに、GRIIIxは人生最低のカメラになってしまいました。
私の体験があなたのカメラ選びの参考になれば嬉しいです。私の悲しい体験も、記事にして誰かの役に立てば供養になるというものです。
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