RICOH GRIII が 28mmの単焦点レンズ だけで十分な理由

「28mmだけって使いにくくない?」

RICOH GRIIIを買う前、28mm(18.3mmのフルサイズ換算)の単焦点レンズのみが搭載されたGRIIIの仕様を不安に思っていました。

高いお金を払うのだから、絶対に失敗したくない。
そう思って色々と調べてみるものの、ネットの情報だけではよくわからず……結局、最後はエイヤ!でGRIIIを買ってみました。

結論からいってしまうと、GRIIIを1ヶ月使ってみて、28mmの単焦点レンズのみ、という仕様に不満を覚えたことは一度もありません。ズームを搭載して画質が劣化するぐらいなら、この28mmの単焦点レンズのみの仕様で正解だったんだな、と思えます。

28mmという画角はスマートフォンのiPhoneのカメラと同じ、とよくいわれます。世界一使われているスマホのカメラが採用している画角です。使いにくいはずがありません。

しかし、28mmという画角には弱点もあります。それは広角レンズゆえの画像の「歪み」です。

こんな経験をしたことがないでしょうか、撮影した写真の端のほうに写った人の顔が引き伸ばされ「奇形のようになってしまった」ことが。実はこれが広角レンズのしわざです。広角レンズは目前の風景を広く撮れるメリットがある反面、写真の端のほうが引き伸ばされて写ります。これを「歪み」といいます。

ためしにお手持ちのスマホで誰かの顔を「写真の端(角)のほう」に入れて写真を撮ってみてください。顔が歪んでしまうのがよくわかると思います。

「歪み」というとなんだか悪いことのように思えるかもしれませんが、写真のプロはこの広角レンズの特徴を活かして「パースの付いたダイナミックな写真」を撮影します。風景写真などでは、「歪み」は「誇張」のための道具として活用されるんですね。

28mmという画角は広角レンズの中では歪みが少ないほうではあるものの、歪みが気にならないレベルではありません。けれど、28mmという画角でも歪みを気にせずに写真を撮るための機能「クロップ機能」がGRIIIには搭載されています。

クロップ機能は、本来は28mmしかないはずのGRIIIで、35mmや50mmという画角の写真を撮れるようになる機能です。画角がよくわからない方は「ズーム機能」と同じようなもの、とお考えください。

これが28mmの標準サイズでの撮影。

35mmサイズ。28mmサイズよりも被写体に近づいていますね。

50mmサイズ。画面から被写体がはみ出るほど近づきました。

クロップ機能を使うと、35mmと50mmという被写体に近づいた「せまい画角」で撮影ができます。つまり、28mmという広角レンズの弱点である「歪み」を気にせず撮影ができるようになるんですね。人物の写真や、フリマアプリやオークションに出品するため物撮りなど、歪みがマイナスに働いてしまう被写体の撮影に重宝します。

そんな便利なGRIIIのクロップ機能ですが、弱点……というほどでもありませんが、ひとつ問題点があります。それは「画素が減る」ということです。

GRIIIのクロップ機能で撮影できる35mm、50mmという画角は擬似的なものです。GRIIIはあくまで28mmしか撮れないカメラです。28mmの単焦点レンズしか搭載していない、というのはそういう意味です。つまりGRIIIのクロップ機能とは、28mmサイズの写真を「トリミングして35mmや50mmというサイズに調整」するための機能なんですね。

ここが純粋なズーム機能とクロップ機能の違いです。ズームは画角を変更しても画素が変わることはありません。画素は常に一定を保ったまま撮影することができます。
クロップ機能の場合は、画角をせまいものにすればするほど画素が減っていきます。GRIIIでは28mmから35mmにすれば画素は減りますし、50mmを選べばさらに画素は減ってしまいます。

こういうと「画素が減るならダメじゃん!」と思われる方は多いと思います。一般的にデジカメは「画素が多い = 画質が良い」といわれることが多いです。しかしこれは半分は正しくて、半分は間違っているといえます。

画素の必要性は「何で写真を観るか」によって変わります。
簡単にいうと、もしあなたが写真をポスターサイズより大きな紙に印刷して観たいのであれば、画素はいくらでもあるにこしたことはありません。印刷して写真を高精細に見せるには画素がモノを言います。

しかし、写真は印刷してもアルバムに貼るようなサイズしかせず、普段はパソコンやタブレット、スマホのような「ディスプレイ」でしか写真を観ない、という方には画素はそんなに必要ありません。

ここであなたに質問です。いま日本の家庭で一般的なテレビやディスプレイのサイズである「フルHD(FHD)」の画素数はいくつかご存知でしょうか? 正解は約207万画素。たったそれだけしかないんです。つまり、どんなに写真が高画素であったとしても、約207万画素を超えてしまう部分は表示することができません。意味がないんですね。
GRIIIのクロップ機能は、35mmで約1600万画素、50mmで約800万画素、になります。フルHDの環境で観るなら十分すぎるどころか多すぎます。

ちなみにフルHDの次、次世代の標準ディスプレイサイズである「4K(UHD)」の画素数は約830万画素です。これでようやく50mmクロップの画素数とほぼ同じくらいになります。35mmクロップの1600万画素は、4K時代でも大きすぎて半分くらいは意味がありません。

今後、新しいディスプレイサイズ(この場合は4K)が標準になると、その時代は10年くらいは続きます。これから10年というと2030年になります。この時代になると、もう「アップスケーリング(アップコンバート)」という技術が定番化しているはずです。
アップスケーリングとは、簡単にいってしまえば、コンピュータ処理で少ない画素数で撮影された写真を、高画素な写真に変換する処理のことをいいます。こういうと未来の技術感がありますが、実はアップスケーリング自体はわりと昔からある技術なんです。

ではなぜアップスケーリングは普及していないのか。理由は簡単、必要がなかったからです。先ほどもいったように、現在の主流となるディスプレイサイズであるフルHDの画素数は約200万画素。デジカメが普及しはじめたときには、それを上回る画素数を搭載したカメラらが一般的でした。つまり、今日わたしたちが使っているディスプレイというのは、大昔のデジカメで撮影された写真ですら観賞に耐えうるということなんです。このような理由からこれまでアップスケーリングはあまり必要とされてこなかった、というわけです。

しかし今後、4K、8Kの時代を迎えると、さすがに大昔のデジカメで撮影された写真では画素が足りません。精細さが足りずぼやけた写真になってしまいます。そこで脚光をあびるのがアップスケーリングです。コンピュータ処理によって足りない画素をAIが判定して補い、低画素の写真を高画素な写真に生まれ変わらせます。

説明が超絶長くなりましたが、GRIIIのクロップ機能を使ってバンバン撮影しても、未来で画素数が足りなくて泣くようなことにはならない、というのが私の見解です。ゆえに私はGRIIIで容赦なくクロップ機能を使って撮りまくる! ということです。画素数を心配する時代は、いずれ終焉を迎えることでしょう。

ここまで28mmはちょっと広いけれどクロップ機能を使ってせまくも撮影できます、的なことを書いてきましたが、反対に「28mmがせまいのでは?」という人もいらっしゃるかもしれません。そういう方にはRICOHがGRIIIで21mm相当の撮影を可能にするワイコンレンズを用意してくれています。このワイコンレンズを使うか、縦写真を複数枚撮影してLightroomやPhotoshopのような画像編集ソフトで画像を結合し、パノラマ写真にすることもできます。まあ、28mmでせまいと感じることなんて、そうそうないと思いますけどね。

というわけで、28mmの単焦点レンズだけしか搭載していないGRIIIでも、クロップ機能などを活用すれば撮れないものはない、心配する必要はない、ということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

GRIIIの購入を検討されている方の参考になれば幸いです。

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