誰もが欲しがるアクノレッジメントで相手から成果を引き出そう!コーチングのプロが教える「ほめる」技術

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「アクノレッジメント」を活用したコーチングの考え方や、人物傾向別に具体的なコーチング手法なども紹介したコーチング本を読んでみました。

コーチングとは自己説得をうながすこと

コーチングでは、質問を投げかけ、その質問に相手が答えるプロセスの中で、自然に相手が自分自身をある行為に向けて説得し動いていくのをサポートします。これを「自己説得」を引き起こすといいます。「自己説得」した行動は、「他己説得」された行動、つまり「ああしなさい、こうしなさい」と、他人からいわれて説得された行動よりも現実化する可能性が高いといわれています。

「コーチング」という言葉からは「ああしなさい、こうしなさい」をイメージしてしまいがちですが、真のコーチングは相手が自発的に行動するように「仕向ける」ことなんですね。

アクノレッジメント

コーチングではそのエネルギー供給のことを「アクノレッジメント(acknowledgement)」といいます。このアクノレッジメント、つまりエネルギーの供給回数が多ければ多いほど、供給方法にバリエーションがあればあるほど(レギュラーガソリンで動く人もいれば、軽油で動く人もいるわけですから)、相手をより遠くまで、ひいては目的地まで動かすことが可能になります。

「アクノレッジメント」とは相手を「ほめる」などを含めた「認める」に値いする行為全般、すなわち承認欲求を満たしてあげることのようです。

「アクノレッジメント」とは燃料のようなもので、コーチングで動いてもらう相手に上手に供給していくことで目的地へと導いていくのだそうです。

燃料なので当然、定期的に供給してあげる必要があるわけですが、相手が何かを成し遂げた場合などの稀な機会でのみ「アクノレッジメント」を供給するばかりで、日常的な供給をまったくしていない人は多いのではないでしょうか。

普段から目を光らせて隙あらば「アクノレッジメント」を供給するようにして、相手が燃料不足にならないように指導者は心がけたいものです。

承認欲求を満たしてあげる

だからこそ人は「君がいることに気が付いているよ」と伝えてくれて、不安を取り除いてくれる人を求めます。 安心したいのです、みんな。そして、安心したいという究極の欲求を満たしてくれた人に対して、人は絶大な信頼を寄せます。

人は誰しも大なり小なりの違いこそあれど他者からの承認を求めているものです。

面白いのが人は既に自分の承認欲求を満たしてくれる相手には、自分からも相手の承認欲求を満たす行為をいとも簡単にすること。

例えばSNSなどで自分をフォローしてくれている相手をフォローすることには何の心理障壁も感じないものですが、その逆に抵抗感を感じるという人は多いのではないでしょうか。

つまり、承認欲求を満たしたい人は、まず自分から誰かの承認欲求を満たしてあげれば良いんですよね。

文字にすればたったこれだけのことをめぐる駆け引きからいかに抜け出せるか、コーチングだけでなくビジネスでも人生でもそれがコツのような気がします。

相手のききたがっていることを言う

ほめるというのは、ただ「すごい!」「すばらしい!」と美辞麗句を投げかけることではない、と。相手が心の底で、他人から聞きたいと思っている言葉を伝えて初めて、「ほめる」という行為は完結すると。

その人が喉から手が出るくらい聞いてみたいと思っている言葉は何でしょうか。もしそれを聞いてしまったら、あなたのために何かせずにはいられないと思うような、その言葉は何でしょう。

「相手がききたがっていることをいう」というと、技巧的な側面をとらえてネガティブな印象を受けてしまう人はいるかもしれませんね。

「ほめる」というのは頭で考えるものではなく、反射的に口をついて出る言葉だからこそ価値がある、と思うのは私もよく理解できます。相手を動かす意図をもって「ほめる」ということについて疑問がまったくないわけでもありません。

しかしコーチングというのは結果を出すことを求められるわけです。結果を出せないコーチはクビになってしまいます。

それに褒め言葉が反射的に口をついて出る、という状況は相手にとってはかなりの達成度を求められる行為なわけで、そもそも思うような結果が出なくてコーチングを求められたというのに、その相手が何らかの達成をするまで「ほめない」というのはいかがなものかと。

会社などで例えるならプロジェクトの成功時などがコレに値すると思いますが、そんな機会は少ないでしょうし、これが波風立たぬ日常こそ成功状態である家庭内だったりすると下手をするとずっと褒めることがないままになってしまいます。

技巧的に相手を褒めることをヨシとしないあなたの心持ちは、素晴らしいものだと思いますが、もうひとつの側面としては「相手が褒められぬ=自分の尺度でしかモノを見れない」ということにもなるのではないでしょうか。

プロのあなたから見れば大したことではないことも、あなたの技術レベルに満たない者にとっては十分に賞賛に値いすることだったりします。はじめたばかりの初心者には偉業に思えるものです。それを応用して、常にコーチング相手の技術レベルのちょっと下あたりの目線に立つように心がけて評価するようにすれば技巧的ではなく素直にホメられるようになるのではないでしょうか。

ひねくれた解決法かもしれませんが、私はこれで「ほめる」ということに苦手意識はなくなったので、ぜひお試しになってみてください。

見たままでも良い

そして見たことをただ伝えてあげるのです。「今朝はずいぶん早く来て練習の準備をしていたな」「君はすごくスパイクやグローブを大切にしてるんだな。よく磨いているところを見るよ」「君は声が大きくて通るな」。とくにほめているわけではないけれど、そのことについては知っているよ、気が付いているよと、ただ繰り返し繰り返しメッセージを投げかけました。すると一か月ほどで選手の「好奇の眼」は「信頼の眼差し」に変わったそうです。

褒めるのが苦手でも、まずは相手の行動や変化に気がついて声をかけてあげるだけでも十分に成果が出るようになるそうです。なるほど、女性が髪を切ったことに気がつける男性は「あなたのことをよく見てるよ!」と言っているのと変わらないのでモテるわけです。

でも実は「ほめる」よりもこちらの「気づく」のほうに難しさを感じるのは私だけでしょうか。

「ほめる」はヨシとされる褒め言葉がある程度確立されているので前述のように技巧的に行うことが可能だと思いますが、「気づく」は自分の中に他者の変化に気がつけるだけの資質を要求されると思うのです。

指導者というのは究極的には、相手の行いを受信するアンテナ感度に磨きをかけていき、誰よりも鋭く気が付き褒めてあげることが要求されるのでしょう。


以上のように、本書では「コーチング」という視点から相手に行動してもらうための考え方やノウハウについて紹介されています。

引用にはなかったのですが、本書中では具体的なタイプ別のコーチング方法についても紹介されているので、特定の部下の育成などに四苦八苦されている管理職の方には役立つのではないでしょうか。

また、職場だけでなく家庭など、コミュニケーションを要するところで意識しておきたいこともたくさんありましたので、興味のある方は一読されてみてはいかがでしょうか。