速く読めば、読書の質は上がる

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本を読むときは、できるだけ速く読むようにしています。
速く読むことで、本当に重要なことに集中した、質の高い読書ができるからです。

先日、教室の生徒さんとこんな話になりました。

「本を読みたいとは思っているのですが、いつも最後まで読みきれなくて」

この生徒さんは、読みたい本があると買って読んではみるものの、いつも一冊最後まで読み切れず悩まれているそう。詳しく話をきいてみると、本の内容で出てきた知らない単語や概念について調べているうちに、気が散ってしまい読書が中断、再び本の内容に集中できなくなるそうです。

その気持ち、痛いほど私にもわかります。

かつて私もビジネス書を読むときに、知らないカタカナ語でよくこの状況に陥っていました。エビデンス、コミット、コンバージョン。私の読書はカタカナ語との戦いです。さらに電子書籍による昨今の読書環境が追い打ちをかけます。わからないことはすぐにWebブラウザで検索できてしまうのです。

ふむふむ、なるほど、わかった。それなら最初からエビデンスなんて言わずに証拠っていえばいいのに。お、LINEが来ているな。返信っと。さて、読書に戻……れない。

一度途切れた集中は、簡単には戻りません。
気がつけば熱心に読書していたはずの私は、モンストでひっぱりハンティング中。なぜこうなってしまったのか。

どうしたら最後まで本を集中して読み続けることができるのか。
気がつけばモンストを防ぐにはどうしたらいいのか。

そんな時、ネットニュースで速読についての記事を見かけました。たしか速読の是非についての研究結果が〜的な内容だったと思います。しかし肝心なのは内容ではありません。「速読」という読み方。その特殊な読み方に、本を最後まで集中して読むためのヒントを見つけたのです。

速読している人を想像してみると、彼らは知らない言葉を見つけたからといって、いちいち読書の手を休めている気がしません。そう、彼らは「速く読む」ことを目的としているので、知らない言葉を見つけても読書の手は休めず、文脈などから補完したり、知らない言葉は諦めたりして速く読むことに集中しているのでしょう。

つまり、速読とまではいかないにせよ、「本をできるだけ速く読む」と意識することで、些末なことに気をとられず、本に集中し続けられるのではないか。そんな仮説を立てました。

実際に試してみると、効果は抜群。
速く読むことを意識すると、些末なところを捨ておけるようになり、一冊最後まで読書を継続できるようになりました。さらに、これまでよりも本の内容が頭に残りやすくなった気もします。
結局、それまでは細部に気をとられすぎた「木を見て森を見ず」のような読書をしていたのでしょう。それが本を速く読むと意識することで「木を見ず森を見る」ような、本の内容に集中しやすい読書スタイルへと進化することができました。

これは移動手段に例えるとわかりやすいかもしれません。

徒歩で移動するとき、私たちは色んな発見をします。散歩するネコ、季節の草花、変わった形の雲。ひとつひとつは興味深く、世界を彩る素敵な発見だったりしますが、その度に足を止めていたのでは目的地には一向にたどり着けません。目的地を目指す場合は、世界の彩りも喜ばしくない誘惑となります。

反面、自動車で移動するときはどうでしょう。速い速度では視界がおのずと狭まり、徒歩ならば気がつけたことに気づけなくなります。しかし、だからといって東京タワーやスカイツリーが目に入らなくなることはありません。速い速度では、本当に重要なことだけが目に入ってきます。

見慣れた情報は記憶に残らず、見慣れぬ情報だけが記憶に残る。
これは情報収集のための読書体験としては、最も理想的な状態といえるのではないでしょうか。

私たちは「本の読み方」をどこかで習ったりはしません。気がつけばなんとなく読み方が固まっているものです。しかし、その本の読み方が、必ずしも自分にとってベストでない可能性は大いにあります。もしあなたが今の読書体験に満足できていないのであれば、思い切って本の読み方を変えてみるべきかもしれません。多くの方にとって本の読み方は「盲点」となってしまっている、そんな気がしてなりません。

さて、モンストしよ。