kindle版で190円という安さにつられて読書の秋らしく一気に読んでみました。
私は自分で「のろま」という言葉に縁遠い人間と思っていたのですがこの本を読んだあと、「のろま」とは誰もが陥るおそれのある一種の「症状」であるのではないかと思えました。
完璧主義者こそ「のろま」の罠に陥りやすいというのはまさにその通りですね。
自分に自信がある人(上っ面だけ)ほどプライドが高く、失敗を恐れ、完璧を目指してしまい満を持さなければ物事を進められない「のろま」に陥りやすいのです。
そして本書にもあるように、これまでの日本はこういうタイプの人の評価が意外に高かったのも事実でしょう。
しかしこれからは真に自分に自信のある人ほど自分の中の「完璧」にとらわれず、及第点で物事をすすめ、周囲の意見によって完璧を作り上げていく人こそ求められているのです。
結局のところ「のろま」に陥ってしまう根底にあるのは「自己愛」といえます。
中途半端なものを外に出すことで自分のプライドが傷つけられるのを恐れているのです。
ここがビジネスと噛み合わぬところで、基本的にビジネスとは他者を助ける「他者愛」なものですから、自分が傷つきたくない自己愛者にはビジネスがとても難しく感じられてしまうのです。
でも実際は、ビジネスに自己愛を挟まなければ簡単なものなんです。
相手の話を訊き、相手のより良き方向へと舵をとっていけば良いわけです。
私自身、未だ実践できているとは言いがたいですし、制作をすればそこに自己愛を挟み込んでしまうこともあります。
それでも最近は、仕事中に作り手の言い訳というカタチで「自己愛」が顔をのぞかせると「格好悪いな」と不快感を感じれるぐらいにはなってきました。
認知できれば改善はできるはずと思います。
完璧主義ゆえの「のろま」について書いてきましたが、本書には「のろま」の症状別に対処法がいくつか書かれています。
私もよくある「気分やモチベーション」を理由に「のろま」に陥ってしまう場合について、森田療法というメソッド?を例に「感情はあるがままにしておきなさい。行動は目的本位にしなさい」というのは納得。
つまり、やる気ない=やらない、ではなく、やる気ない=やる、という一見成り立たぬような式が成り立つということです。
しかし確かに考えてみれば我々は何もすべての物事をやる気やモチベーションをもって取り組んでいるわけではなく、義務感や責任感によって行動することもある、というかそのほうが多いくらいですよね。
すなわち「やる気」は別になくても「行動とその結果」には相関関係がないということなんです。
ここで成果物のクオリティ云々をいうのは前述の完璧主義ゆえの「のろま」に繋がって悪循環を生み出していくわけですね(笑)。
「のろま」の自覚がなくても、自分が潜在的な「のろま」かどうかの確認にもってこいの本だと思いますので一読されてみてはいかがでしょうか。