文章を読んでもらうためのライティングのテクニック集!「読ませる」ための文章センスが身につく本

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いかに相手に読んでもらうための文章を書くのか。実際に文章を書く際に気をつけたいことやテクニックを紹介した『「読ませる」ための文章センスが身につく本』を読んでみました。

ツヤのある文章を

「読んでもらう」ためには、文章に何が必要なのでしょうか。ひとことで言うと「ツヤ」です。爽やかさを感じさせる文章の調子や、パッと見て抵抗なく入っていけるような文字の並び、何かあるんじゃないかと思わせる間の持たせ方、読んでよかったと思えるオチの納得感……、こういったものを文章に埋め込んでおかなければいけません。逆に言えば、わかりやすくて正確なだけの「明文」では、ダメなのです。

「ツヤのある文章」というと抽象的ですが、文章の教科書に書かれているような「型」に盲目的に従うのではなく、読んでもらうための「何か」がある文章、それが「ツヤのある文章」と著者はいいます。

本書ではいかにして読んでもらうために必要な「ツヤ」を文章に盛り込み適用していくかについて語られています。

断言調で書く

人の気持ちをつかむためには、心配や不安を乗り越えて、半ば強引にでも自信を持って書かねばならない。潔く、断言して文章をまとめていけば、不思議と説得力が生まれます。 「迫力」と言ってもいいかもしれません。それこそが、「読ませる力」です。

これは文章を書かれている方はお気づきと思うのですが、文章中で「断言」するというのはハードルの高い行為なんですよね。

ついつい「自分が批判されたくない」という保身の気持ちから、予防線をはり断言することを避けて曖昧にボカシてしまうのです。Webでは特に「炎上」を警戒して保険をかけてしまいがちです。ある意味、火災保険。

確かに断言することで説得力が生まれるのは理解できますが、趣味のブログ程度の文章であれば、断言調にしてしまうことでいらぬ誤解やバッシングを受けるリスクが上がるくらいなら、曖昧にボカシておくほうが様々な点で楽なのです。

しかしブログでもアフィリエイトなどのなんらかの成果を期待するものであれば、積極的にリスクをとって断言していくほうが良い結果が出やすいのではないでしょうか。←コレですよね。

むしろマーケティングの名の元に書かれるすべての文章は断言調でなければなりません。断言調で書くだけでビジネスに良い結果が望めるようになるのです。←やっぱり怖い。

マナーとしての「大風呂敷」

マナーとしての「大風呂敷」 「期待感」がないと「読めない」

「読んでもらう」「伝える」ということを考えた場合、嘘はダメだけれど、「そのまんま」もまたダメなのです。

著者いわく、「そのまんま」の文章では相手がよほど関心の高い状態でなければ読んでもらえないので、大風呂敷を広げて「どういうことだろう?」という期待感を抱かせ、関心が低くても読める工夫をすることが、読み手に対する書き手のマナーだといいます。

これはサジ加減を間違えてしまうと誇大広告になってしまいそうですが、同じ読まれない状態であれば、読み手に読まれる工夫をしただけ誇大広告のほうがまだマシなのかもしれませんね。

書き手のジレンマ

不思議なもので、書き手が興奮すればするほど、読む側は醒めるものです。

これですよ。この現象はいったいなぜ起こるのでしょうね。

この現象は書き手と読み手の関係性だけで起こるのではなく、深夜のラブレターに代表されるように、後に自分で見た時にも同じことが起こることがあります。書いた時の興奮が迫力となって相手に伝わるどころか、読み手に恥ずかしさを感じさせてしまい文章から離脱されかねません。

おそらく興奮して書くと、その興奮に薪をくべるかのような言葉ばかりを使用してしまい、肝心の読み手に対する配慮が欠けてしまうからなのではないかと。

なんからの成果を期待する文章を書く場合は、自分のメンタルにも気を配って書けるようになると良いですね。日記ブログのようなものであれば興奮をそのままブツけたような記事も面白いとは思いますが。

表現のインフレ化

こんな、「押し」の弱い文章でいいのか? と心配する人もいるでしょう。答えは「商品説明ならこれでいい」です。表現のインフレ化は、おそらく情報誌や広告の影響でしょう。コピーやキャッチ、おすすめのお店などの紹介文を書くとき、無意識にメディアの文章を真似る人が増えた結果だと思います。派手な言葉は、まわりが地味な言葉ばかりのときは目立ちます。ところが、みんなが派手な言葉を使うようになったときは、埋没してしまう。 現代はむしろ、飾り気のない「地味な言葉」が引き立つ時代なのです。

「表現のインフレ化」というのはこれまで気がつきませんでしたが、周囲を見渡してみれば確かに納得のいく状況であることは明らかです。

これまではパワー感のある言葉でなければ相手に刺さらないのではないかと思い「過激な言葉」をコピーに使用することが多かったのですが、言われてみればそういった言葉はもう「普通」になってしまい目に止まらなくなっているんですよね。

本書中では、この点についてわかりやすい例文が掲載されていて、それを読めばさらに深く理解することができます。

「詳しさ」は説得力の源

 具体化すると説得力が出る──。考えてみれば、これは当たり前の話ですね。

 逆から言えば、「抽象化は伝わらない」ということです。「世界の見方が変わるような本」とか「ちょっと贅沢で特別な雰囲気のあるお店」とか、こういった標語みたいな抽象的な言葉には、まるで人を説得する力がありません。それより「平日のイオンモールにいる主婦がついレジに持っていってしまうような本」「20代のサラリーマンが彼女の誕生祝いに使うようなお店」のほうがはるかにいい。

これも先述の「断言調」にすると同じで、詳細化、具体化というのは人間の心理的に難しいものがあるんですよね。人の持つ「保身」の欲求に逆行する行為にみえてしまうのです。

これは文章だけでなく、ビジネスのターゲット設定などの際にもよくいわれることなのですが、あまりに具体的な設定を行ってしまうと「取りこぼし」が多く発生してしまうように感じるので、つい曖昧で抽象的な設定を行ってしまうのです。30代男性、とか40代主婦、みたいな。結果、誰にも届かないビジネスに成り下がってしまうのです。

この点と先述の「断言調」にすることも合わせて考えると、文章でもビジネスでも、成果を求めるのであればやはりリスクを負う必要があるんですよね。

曖昧で抽象的で楽しみながら書きやすいけれど読み手に届きにくい文章か、詳細で具体的で書きにくいけれど読み手に届きやすい文章を書くのか。自分の書く文章の性質を見極めて判断してください。

想起させる

いま説明したテクニックの肝は「想起させる」という点にあります。「(直接は書いてないけど)暑かったんだなあ」「(普通に書いてるけど)これってスゴイ体験じゃないか」というふうに、読み手の意識にのぼれば、強いインパクトが残せる。というのも、それは読む側が「自分の力で能動的に読み取ったこと」だからです。

私も教育者の端くれのようなことをしているのでこの点については非常に共感できるポイントです。

理解して欲しいことを一から十まですべて語ったとしても、相手はその場では「なるほど」と思ったとしても結局は身につかないのです。おそらく人は「自分の体験」でないものを真剣に理解できるように出来ていないのではないかと。

だからこそ、この引用にあるように想起させたり、考えたりさせることで、こちらが伝えて理解して欲しいことに「参加」してもらうのです。そうして客観から主観にスライドすることで相手の「自分の体験」になり理解を助け、身につきやすくなります。

文章においては、あえて言いたいことを直接書かないようにして想起させる、ということですが、難易度は相当高いように思います。


本書はこれまで読んだライティング本と比べても「アタリ本」といえる良書でした。

「作法」ではなく「テクニック」中心の本で、文章を書く際に注意しておきたいことや、読んだ後からすぐに使えるテクニックが満載です。

そもそもこの本が説得力のある素晴らしい書かれ方をしているのだと思います。読後の納得感は他書ではなかなか感じられないレベルでした。

趣味でもビジネスでも、文章を書く機会が日常的にある方は目を通して損はないオススメの良書です。