ブチ抜く力 /与沢 翼 書評

かつてネオヒルズ族といわれ、時代の寵児と呼ばれるも事業に失敗。その後、海外へ移住し、株や仮想通貨、不動産投資で表舞台に再浮上。最近では2ヶ月で22kgものダイエットに成功し、そのストイックな一面が注目を集めています。

そんな浮き沈みの激しい人生を送る与沢 翼さんの思考をのぞきみることができる著書『ブチ抜く力』を読んでみました。

ブチ抜く力 /与沢 翼 書評

「選択と集中」とは、「結果」を選ぶこと

たったひとつの結果のために魂を売る。
皆さんは、そう言い切れるくらいに何かをやり切った経験はあるでしょうか?
もし、あなたがどうしても達成したい「何か」があるなら、その目標のためだけに時間、エネルギー、コスト、自分が持ち得る「全て」を絞り出し、一つのことに賭けてみてください。

「選択と集中」という言葉は、ビジネスの世界に身を置く人であれば誰もが知る言葉です。もっとも有名な成功法則かもしれません。

一般的に選択と集中というと「やることを絞る」と考えます。アレコレやらずにたったひとつのことに集中する。そう理解されている方は多いのではないでしょうか。私もそう考えていました。

しかし与沢さんの選択と集中はその先をいっています。「やること」ではなく「結果」を選択することに集中します。
たったひとつの「結果」を得るために、他の全てを犠牲にする。凡人にはストイックすぎるようにみえるその姿勢こそ、成功に一番必要なことだと与沢さんはいいます。

ストイックに続ける

生半可な覚悟や中途半端な行動は、無意味です。
とにかくひたすらストイックに、自分が心から「やり切った、もうこれ以上はやりたくない」と思えるまでやり抜く。
これが唯一にして絶対の成功法則だと、私は確信しています。

どんな成功法則も最後はここにたどり着きます。それは与沢さんも例外ではありませんでした。

「成功するまで徹底的にやり続ける」

成功法則はシンプルです。誰もが理解し納得できます。

しかし、理解し納得できたはずのソレを実践できない、続けられない。ダイエットが続けられない、勉強が続けられない、ブログが続けられない。

「では、どうしたら続けられるようになるでしょう?その方法とは〜」

大抵のビジネス書なら継続の重要性を説いた後には、こんな展開が待ち受けています。

「脳科学や行動心理学の見地から○○がよいです。○○がよいとされているエビデンスは□□です。たとえば○○はこんなときにも使えます。以上のようなことから○○であなたは幸せになれます」

と続きます。ビジネス書を読む人なら既視感のある展開でしょう。納得感の得られやすい王道の展開ではありますが、どれも同じような内容ばかりで、いささか食傷気味です。

その点、本書で語られる与沢さんのメッセージのシンプルさは痛快です。

「覚悟を決めてやれ、続けろ」

たったこれだけ。

ビジネス書のカテゴリでは、定期的に「続ける技術」をテーマにした本がベストセラーになります。それだけ多くの人が継続ができず悩んでいるということなのでしょう。科学的な証明に裏付けられた論説は、「今度こそ続けられる!」という自信を読者に与え、行動へと導いてくれる心地よさがあります。

しかし結局のところ、継続のための方法論を探している時点で間違っているのでしょう。方法論を準備して初めると、それはやめる理由を自分に与えてしまうことになります。「方法論が自分に合ってなかった」、そういって継続できない責任を方法論に押し付けてしまえます。悪いのは継続できない自分ではなく、たまたま方法論が自分に合っていなかっただけなのだ、と。自分では継続のための方法を探したつもりが、いつでもやめられる退路を準備していただけ。そんな本末転倒な経験が誰しもあるのではないでしょうか。効率がよく合理的にみえる方法がいつも一番の近道とは限りません。

「覚悟を決めてやれ、続けろ」

成功を目指すのであれば、自分に甘えを許さぬ厳しい精神論を貫き通さなければなりません。それが成功するために必要な考え方なのだと与沢さんはいいます。

センターピンを見つけて試す

では、どうやってセンターピンを見つけるのか。それは、ごくごくシンプルです。
まずは、間違っていてもいいから、自分にとって「これが本質ではないか?」と思えるものを探し、すぐに試してみる。

経営戦略や企画会議ではよく製品やサービスの「コア」や「軸」、つまり「本質」について議論されます。自分たちの商品の本質を知ることで、施策の精度を上げる狙いです。

与沢さんは物事の本質のことを「センターピン」といい、いかに本質を捉えることが大切かを説きます。そして「間違っていてもいいから〜すぐに試してみる」と、行動を促します。この「すぐに試してみる」がポイントです。

本質を知ることの重要性は誰もが知っています。そして実際に行動を起こす前に、どうにか本質を知ろうとします。
しかし、実際にやってみる前に本質を知ることは容易ではなく、仮説の域をでることはありません。ゆえに私たちにできることは、それらしきものを見出したら実際に試してみることだけです。仮説検証を繰り返す以外に、本質に近づくことはできません。

まだ本質を捉えていないからといって行動しない人がいます。しかし、それではいつまで経っても行動できません。本質を知ることを行動しない言い訳にしてしまっているだけです。

まずは仮説を立ててやってみる。これ以外に本質に近づく術はありません。

まとめ

私は本書を通じて与沢さんから「成功するということは失うこと」という厳しいメッセージを受け取りました。
多くの人は「成功する」というと色んなものを得ることをイメージします。

しかし、真に「成功する」とは失うことです。

与沢さんは今でこそ再び成功して何もかも手に入れているように見えます。しかし、ここにたどり着くまでには多くのものを失っていました。それは、私たちがテレビを見ている時間、スマホゲームに興じる時間、友達と呑みに行く時間。ひとつひとつを見たらとるに足らないようなものばかり。しかしそれを人生から一切排除して一点に集中したからこそ、今日の成功を手に入れられたのです。結果だけみて彼を「得た人」というのはあまりに軽薄です。誰よりも「失った人」であり、その勇気と覚悟を尊敬します。

成功を志す人は本書を一読し、成功のために失う覚悟があるかどうか、自分に問うてみてはいかがでしょうか。

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