口ではなく手を動かそう – Webサービスのつくり方 ~「新しい」を生み出すための33のエッセイ

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「ぐだぐだ言ってないでコードを書けよ、ハゲ」この言葉はプログラミングに携わる者すべてが肝に銘じておくべきですね。

Webサービスの開発というのはそのサービスのアイディアに独自性や新規性があればあるほど議論が活発になってしまい机上の空論を永遠と垂れ流す状況になりがちにです。

未知なる場所を目指して歩むわけですから、誰もが不安ですし先行きを話せば無限の心配事や不明点など「クリアにならない箇所」は山ほどあります。

サービスの一機能について議論していたつもりが、そもそも論で遡上し続けて気がつけばそのサービスの意義について話していた、なんてことは私の会社でもよくあります。

口を動かさず、手を動かす

最近、私はサービスの開発に「議論」は不要なのではないかと考えています。

サービスを開発するうえでのコミュニケーションは必要ですが議論するというのはどうしても上記のような状況になりがちです。

自分達で使うサービスでもなければ、社内で議論しても無意味で、ユーザーに試してもらうためのプロトタイプを作成して見せにいくほうが良いわけです。

実はこんなことはこの業界に携わるすべての人が理解していると思いますが、口を動かすほうが手を動かすより心理的にも動作的にも簡単で楽なため、あちこちの開発現場ではユーザ不在のまま開発者達の議論が起こっているわけです。


本書の冒頭に登場する「ぐだぐだ言ってないでコードを書けよ、ハゲ」というメッセージ。

これはまさにこんな状況を一刀両断してくれる素晴らしいメッセージだと思います。

後世に残る偉大な名言は綺麗な言葉で構成されていることが多いですが、この名言は開発者達に「議論をやめ、コードを書くことでしか良くも悪くも評価されないんだよ」という気持ちを起こさせる目的において素晴らしく機能的な言葉がチョイスされていると思います。

特に「、ハゲ」の部分がこのメッセージに反論をさせず黙って行動させる力場を発生させている(笑)。

そこに1000人いたとして、アイデアを思いつくのが100人、アイデアを実現するのが10人、アイデアで成功する人は1人

本書のはじめのほうにこんな一節があるのですが、つまり「アイデアを思いつくのが100人 = 口を動かすのが100人」であり、「アイデアを実現するのが10人 = 手を動かしたのが10人」ということですね。

どれだけ議論をしたか、は成果になりませんが、どれだけ作ったか、は大いなる成果につながっていくのだと思います。

本書を読む前に留意点として本書はプログラミング言語のPerlで例文などが書かれています。

そんなに難しいものではないので他言語でプログラミング経験があれば理解できるとは思いますが、経験の無い方はちょっと面食らってしまうかもしれませんね。

私自身もコードがそのまま書かれているような本だと思っていませんでしたので少し意外でしたが、掲載点数が多いわけではないので理解できなくても読み進めることはできると思います。

内容はチームによる大規模開発などではなく、個人レベルからの出発に特化していますので、これからWebサービスを開発してみたい個人の方にとっては良きリファレンスになるのではないでしょうか。

特に私も高速開発の点においては著者の考え方に大賛成です。

高速開発を行うにはある程度の熟練を要してしまいますが、無駄な議論を避ける手段はもはやこれしかないのではないかと思っています。

個人~少人数でのWebサービス開発の本は珍しいと思いますので、興味のある方はぜひ手にとって一読してみてはいかがでしょうか。