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α7IIIユーザーがα7Cに買い換えるのをやめた話

「全然コンパクトじゃない!」
「ユーザーのことを考えていない!」

なんでこんなことになっちゃったんでしょう、SONYさん……。

10月23日から販売が開始されたSONYのミラーレスカメラ「α7C」。
「α7III」と同等の性能でありながら、よりコンパクトで軽量になったということで、9月の発表からα7Cの実機に触れる日を楽しみにしていました。

そして昨日。店頭にて実機にさわった感想が冒頭部分です。
α7IIIからα7Cに買い換えるつもりでいましたが、これはちょっと酷すぎるのではなかろうかと。
結論からいってしまえば、α7Cを買うならα7IIIを使い続けたほうが良さそうです。

今回は、α7IIIユーザーである私がα7Cについて感じたことを書いてみます。

α7Cは全然コンパクトじゃない

いきなりですが5秒で買い換えるのをやめた理由がこれです。そもそもコンパクトがウリのはずのα7Cがコンパクトに思えないというのですから仕方がありません。

従来のα7シリーズにあったファインダーの軍艦部分がないので、たしかに見た目の圧迫感のようなものは軽減されています。でもそれだけ。本体の厚みなどはほとんどα7IIIと同じレベルです。α6000シリーズのようなものを想像していただけに、これは本当に残念でした。

結局、カタログスペック的に「これまでのα7シリーズに比べたらコンパクト」ということでしかないんですよね。従来比のお話なんです。
これまでカメラを使ったことのない人にα7Cを「ハイ、これ」と渡して「小さいね!」といわれるようなコンパクトさではありません。これまでゴツくて無骨なフルサイズカメラを使ってきたカメラ好きのオッサンが、「フルサイズも昔に比べると小さくなったな……」とつぶやく程度のコンパクトさにすぎません。
それだって実はα7C(509g)は、7年前に発売された初代α7(474g)よりも重たいんですけどね……。

α7Cはグリップが小さすぎる

そしてα7Cは「軽量」をうたうために、必要な部分まで削ぎ落としてしまいました。グリップが浅くとても小さいです。

これね、意味がわからないんですよ。
先述のように、α7Cはカタログスペック的には従来のαシリーズより軽量化を果たし、重量としては軽くなりました。

ところがα7Cは重いんです。
いや、重く感じるというか、気を使う重さというか、表現に困るのですが、持っていてストレスを感じます。それはおそらくこの小型化されてしまったグリップのせいです。

このグリップの指のかかりがまぁ浅い。自分で意識的に握力を使って握り続けないと、手から滑り落ちてしまいそうです。167gという軽さをうたう純正のキットレンズを装着した状態でも怖さを感じるということは、600〜800gが平均的な重さの標準ズームレンズを装着したらどうなることか。

グリップに怖さを感じるのは、これまでα7IIIを使ってきたからなのかもしれません。α7Cが初めてのカメラの場合は、気にならないものなのでしょうか。

使いにくいメニューボタン

このメニューボタンはきっと大問題になると思います。数ヶ月もすれば価格.comにこのメニューボタンの酷評が並ぶ予感がします。

α7Cのメニューボタンの何が問題なのか。それは位置。α7Cのメニューボタンはボタンが配置された場所が大問題なのです。ここにメニューボタンを配置してしまったことは、SONYのカメラ作りに対する姿勢まで疑わずにはいられないほど重大なことです。

想像してみてください。あなたがα7Cのメニューボタンを押すときはどの指で押しますか? 右手はカメラのグリップを握っています。右手の親指で簡単に押せるような位置でもありません。となればメニューボタンを押すのは左手の人差し指ではないでしょうか。すると何が起こるのか。左手はメニューボタンを押すときに「ファインダー」の前を通過することになります。そしてα7シリーズのファインダーは顔などがファンダーに近づくとセンサーで液晶画面をオフにする仕様なのです。つまりα7Cは、メニューボタンを押すときに液晶画面がオフになります。は? と思ってらっしゃいますよね。私も意味がわかりませんでした。そしてさらに悲しいことに、オフになった液晶画面は、ファインダー前の遮蔽がなくなったからといってすぐには再点灯はしません。オフから再びオンになるには1秒ぐらいかかります。

たった1秒、と思われるでしょうか? でも、メニューボタンを押すということは、すぐにでもあなたは何かを設定したいはずです。そんなとき、液晶画面がオフになり再びオンになるのを待たなければならないレスポンスの悪さに、あなたは耐えられるでしょうか?

もちろん、ファインダーを隠さないようにメニューボタンを押せば液晶画面のオンオフは避けられます。けれどそれは人間工学的に考えて不自然な動作にならざるを得ません。先述したようにα7Cのグリップは非常に頼りないです。そんなグリップを握ってカメラを右手で支えつつ、不自然な左手の動作でメニューボタンを押さなければなりません。それなりに重量のある標準ズームレンズなどを装着してこの動作をする間、右手の握力でカメラ全体の重さを支えなければならないのです。

世界最小・最軽量はウソ?

α7Cは「世界最小・最軽量 フルサイズミラーレス一眼カメラ」をうたっています。
でも実はα7Cよりコンパクトなフルサイズミラーレスはすでにあります。SIGMAが昨年発売した「SIGMA fp」というカメラです。

以下、外形寸法と質量の比較です。

α7C
質量:509g(バッテリーとカードを含む)
外形寸法:124.0 x 71.1 x 59.7mm

SIGMA fp
質量:422g (バッテリーとカードを含む)
外形寸法:112.6 x 69.9 x 45.3mm

α7Cは、SIGMA fpに質量と外形寸法のすべてにおいて劣っています。それなのに世界最小・最軽量とうたうのです。それは普通にウソです。
しかし、SONYのような大企業が公然とウソをつくというのも腑に落ちません。そう思ってα7Cの公式サイトを見てみたところ、

世界最小・最軽量(*)フルサイズミラーレス一眼カメラ
* 光学式ボディ内手ブレ補正機構搭載のフルサイズセンサー搭載デジタル一眼カメラとして。2020年9月時点。ソニー調べ
α7C | デジタル一眼カメラα(アルファ) | ソニー

………つまりSONYは「光学式ボディ内手ブレ補正機構搭載したフルサイズカメラの中で一番小さいんだよー」といっているだけだ、というのです。「世界最小・最軽量フルサイズミラーレス一眼カメラ」という言葉は、そんな前提を含んだうえでうたってもいいのだと?

きっと技術的にはこのサイズに光学式ボディ内手ブレ補正機構を搭載するというのはすごいことなのでしょう。光学式ボディ内手ブレ補正機構を搭載してこんなボディサイズを実現できるのは世界で俺たちだけだ。そんな自負があるのかもしれません。しかしだからといって「世界最小・最軽量 フルサイズミラーレス一眼カメラ」をうたうのは、明らかに一般の感覚とは乖離した話です。通常、「世界最小・最軽量 フルサイズミラーレス一眼カメラ」と言われたら、ボディの「サイズと重さ」のことだと思うでしょう。そこに前提として「光学式ボディ内手ブレ補正機構の搭載の有無」など考えもしないはずです。

今日までにネット上で拡散された各メディアの記事には、「α7Cは世界最小・最軽量 フルサイズミラーレス一眼カメラ」の文言が並びます。そしてその記事には留意点として「光学式ボディ内手ブレ補正機構搭載のフルサイズセンサー搭載デジタル一眼カメラとして」ときちんと語られているでしょうか……。

これはα7Cの店頭の売り場の様子です。
公式サイトでは「世界最小・最軽量 フルサイズミラーレス一眼カメラ」とうたっているのに、なぜかPOPなどでは一言も「世界最小・最軽量」を語りません。通常、世界最小・最軽量のような強みがあるのであれば、それを売り場でも語るのが自然な気がします。

いつでも修正が可能なWebサイトでは「世界最小・最軽量」を語るけれども、容易には修正できない紙媒体では語らないという。それは自分たちが微妙なことをいっていると気がついているから? そして各メディアの担当者はSONYの公式サイトを確認しながらα7Cの記事を書いてしまうわけで……。


どこかで聞いた話ですが、SONYのカメラはよく「カメラ好き、写真好きが作っていない」と揶揄されるそうです。CanonやNikonなどの古くからのカメラメーカーが作るカメラに比べると、ユーザーに寄り添ったモノづくりをしていない、というのです。

SONYのα7IIでカメラを初めた私にはピンとこない話でした。α7II、α7IIIと使い続けて特に不満を感じたことはなかったからです。

でも、今回のα7Cでわかりました。このカメラはユーザーのほうを向いてモノづくりをしているとは私には到底思えません。いったい誰を喜ばせるためのカメラなのか。新モデルの投入を待ち望む株主? 技術者の自己満足? 市場の空白を埋めて喜ぶマーケッター?

もしあなたがα7Cを購入しようか迷っているのであれば、ひとつやってみて欲しいことがあります。それはα7Cを紹介するYouTube動画やブログ記事などを見る際に「ユーザーにとって何が良くなった」と語っているかをチェックしてください。

きっと「バリアングルで自撮りができるようになった」ことと、「軍艦部分がなくなったことでカバンに入りやすくなった」くらいしかユーザーにとって良くなったことは語られないはずです。あとは、

「こんな小さな筐体にフルサイズなんてすごい!」

という技術論が繰り返し語られるだけではないでしょうか。

肝心なのは小さいことではありません。フルサイズであることでもありません。あなたにとって「どう良いのか」の部分。コンパクトで軽くなった → だから? フルサイズセンサーである → だから? の部分です。

そして私にとってα7Cは、

コンパクトで軽くなった → だから → ユーザーにとって使いにくいカメラになった

というのが結論です。

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