5年間の在宅勤務の結論、「リモートワーク(テレワーク)は相当な覚悟がないと難しい」

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5年間の在宅勤務の経験から「私は絶対に他人には勧めない」というのが結論です。

はじめに

私は地方のIT企業にてWebコンサルティング、HP制作やWebシステムの受託開発、自社Webサービスの事業などを在宅勤務で行ってきました。

そんなに大きな会社ではないので、企画、設計、デザイン、プログラミングに至るまで、営業関連以外の社内業務はすべて行います。

オフィスはありますが、必要がある場合以外は基本的にオフィスにいく必要はなく、Skypeなどのツールで社内コミュニケーションを済ませてしまいます。

最近は受託開発を辞め、自社サービスに専念していくこととなり、そこへ全精力を注力していくことになったのですが、この方針転換をきっかけに「この在宅勤務の5年間でいかに自分が変化したか」を実感することとなったので、気がついたことを思うがままに書いてみようと思います。

リモートワークは好きなところで仕事ができる?

できません。

たまに在宅勤務といいますかリモートワークを旅しながらしているという記述をみかけることがありますが、そういった人はそもそも旅自体が仕事か人生の目的なのだと思います。

考えてみてください。

在宅勤務するということは普段から家を出ないことが仕事なのです。

食料品や日用品すらネット経由でどうとでもなる昨今、家を出ないで生活することは何も難しくありません。
実際、私は冬場は1ヶ月ぐらい家から出ないこともありました。

これだけ出不精になれば仕事の打ち合わせでの外出はおろか、旅行に行こう!などという積極性を自分に求めることすら酷なことになるのです。

おまけに在宅勤務では自宅を仕事に最適化したオフィスにすることができてしまいます。
冒頭の画像は私の部屋ですが、デュアルディスプレイで椅子もこだわりのアーロンチェアにして音環境もそれなりに整え快適そのものなので、旅先でわざわざ小さなノートPC1台のような不便な環境で仕事をしようとはまったく思えません。

そもそもリモートワークは合理性の追求の結果として行われるわけですから、私の今日の状態はその追求の結果としては正しく思います。

ゆえにこの問いの回答としては「在宅勤務は自宅でするものであり、好きなところでするものではない」というのが結論です。

罪悪感と暮らす日々

前述の「作業環境の自宅固定化」と合わせると、在宅勤務とは、これすなわち「懲役刑」と比喩するのが最適といえるでしょう。

これはどういうことかというと、在宅勤務という働き方は、我々が小さな頃から教えられたり、日々読む本から形成する「人としての道徳観」に反していると実感してしまうところが多すぎるのです。

例えば私は、目を覚ます時はアラームで起きることがありません。
これは私の寝起きの良さを示したいのではなく、コアタイムなども特に定まっていないので前日の仕事の調子次第で寝起きの時間は変わるのです。
朝寝て夕方に起きることもあれば、ふつうに夜寝て朝起きることもあります。すべてが自分の都合で行えます。

満員電車に揺られることもなければ、朝早く凍結した路面を車で滑りながら出勤することもありません。

起きて仕事をして調子がのらなければ二度寝もできますし、ネットを巡回したり、挙句の果てにはゲームをしていても明確な仕事の時間の定義が無いので問題ありません。
次項にて詳しく書きますが、自分次第でいつでも休憩時間であり仕事時間にもなり得ます。

灼熱の真夏の太陽の下や、息が白くなる凍える冬の外仕事とは違い、外気に左右されずエアコンで自分に最適化された室温にて仕事をしています。

・・・こんな環境でも罪悪感を感じない人がいるのであれば相当強靭なメンタルをしているのだと思います。

決して悪いことをしているわけではありませんが、なんだか怠惰でロクでもないヤツに思えてきませんか?

すると、例えばこうしてブログを書いていたりする時間も捉えようによっては仕事時間を使っている気がして罪悪感を感じますし、ゲームをしていても同様に悪いことをしている気がするのです。

つまり自宅にいる=仕事をしていない、という状態に罪悪感を感じるようになってしまい、終いには仕事以外のことをするたびに自己嫌悪に陥ってスパイラルダウン的に気分が落ち込みやすくなってしまいます。

中東の産油国などで働かずに暮らすことが珍しくないときいたことがありますが、そういった社会通念がある国でならともかく、今日の日本では在宅勤務をするための精神的素養がないのが厳しいと言わざるを得ません。

※念の為に今一度言っておきますが、私はフリーランサーではなく、法人として登記された会社に勤め在宅勤務を許されている立場の人間です。

完全なる成果主義、それが在宅勤務

そしてこれが本当に厳しい在宅勤務の現実です。

よく心配されているような「在宅勤務で社員が仕事をしなくなるのでは?」などということは絶対にありえません。
むしろ仕事をしなくなった時は精神を病んでしまったか思考の迷路にはまった時なので助けてあげてください。

前述の生活をしている私ですが、さすがに仕事の「成果物」を出して他者にも明確に「仕事の進捗」を評価できるように示さなければなりません。

仮に私がデザイン作業をする場合を例にあげると、デザイン作業というのは閃きやインスピレーション次第で仕上がりが早くなったり遅くなったりすることがあります。

通勤者の場合はオフィスでウンウン唸っていれば周囲の人間にも自分にとっても「悩んで頑張っている」ことが言い訳できます。

ところが在宅勤務の場合はそういったところを他者に見せることがないため、今日デザインが仕上がっていない=サボってた、と同義となるのです。

むしろサボっていたほうがやっていないだけでやればできるということを意味するだけ「頑張ったけど出来ない」と言われるよりタチが良いのです。

仕事の経緯を他者に見せることがないため、仕事の成果をもって他人に自分の仕事を報告するしかないのです。

問題なのはこれが仕事としては合理的であるということ。
頑張りを評価に加えず、成果をもって「仕事をした」という理屈が正しすぎるのです。

ところが人間のすることですからどうしてもパフォーマンスにムラが出てしまいます。
調子の悪い日もあれば調子の良い日もあります。

すると必然的に、たまにまったく成果があがらぬことを報告しなければならないことがあります。
その時の罪悪感とプレッシャーの凄まじさといったら・・・

他者が責めなければという類の問題ではなく、やはり自身の内面との勝負となってきます。

明確な作業量がきまっている単純作業などならともかく、企画やデザインなどの知的労働には在宅勤務は難しいというのが結論です。

最近はやっとその辺の折り合いも付くようになりましたし会社的にも理解が育ってきましたが、ここにくるまで5年です。

逆にオフィスに行って戻ってくるだけでも精神安定に貢献すると考えれば決して高いコストではないのかもしれません。

大作ゲームが出ると仕事の進捗に影響する?

これがわかりやすいようでいて皆さんが想像されるものと少し違うと思います。

これも単純に「好きなゲームが発売されたから一日中やる」なら問題はありません。
やめて仕事をすれば良いのですから。

問題はそうではなくて、大作ゲームの発売直後ぐらいに仕事の進捗が進まないもっともらしい理由が出てくる気がするのです。

つまり、自分のやりたいことをやるために、仕事が進まないもっともらしい理屈を作ってしまい自身や周囲の人間を納得させてしまう気がするのです。

「果報は寝て待てだよ。むやみやたらに動かないほうが良い場合もあるんじゃない」

「人事を尽くしたからこれからは下手に動かずに天命を待とう」

日本語にはこういった状況に肯定的に対処するすばらしい言い訳が溢れています。

つまり、在宅勤務環境において「自分がやりたい別のこと」がある場合には仕事のほうをねじ曲げてしまう傾向がある気がするのです。

自分で仕事の進捗管理をしなくて良い立場の方だと少し変わってくるかもしれませんが、自分すら騙してしまうので自己管理に自信があるという人でも知らずに陥ってしまいがちになりそうです。

ダメ人間からは良いアイディアが出る可能性がある

少しだけ良いことも書いておくと、洗練されたアイディアが出るようになった気はします。

これはリラックス環境における恩恵と捉えることもできますが、個人的にはそうでなくて私自身が「ダメ人間」になってきたからなのだと思います。

ダメ人間の「怠惰視点」は凄まじいものがあります。
少しでも難しく思えるアイディアや面倒くさいと思ったアイディアは即却下です。

怠惰でいるための判断はかなりシビアになります。

ビジネスを考えればより人が楽になるアイディアを選び、Webシステムを設計すればどうすれば説明不要で直感的にわかりやすく使いやすくするかに全精力を注ぎます。

足を使える人間にはなかなかこういった頭の使い方は難しいでしょう。

言っていて悲しいですし、足を使う人間がユーザーとの会話から得てくるアイディアのほうが現実的だったりはしますが・・・良くも悪くも革新的なアイディアが出やすいです(笑)。


もっとシンプルに書いていこうかと思っていたのですが、あまりに実感がこもりすぎてついつい自分の思いを吐露するばかりで役立つ文章にはなっていませんね。ここまで読ませておいて申し訳ないです。

「在宅勤務」と「リモートワーク」で多少の違いはあるかとも思いますが、とにかく仕事は会社に行ってやれるのであればソレが一番なのだと思います。それができない場合のみ、在宅勤務やリモートワークを選択すべきなのかな、と。

在宅勤務やリモートワークについてお調べになっている方の参考に少しでもなれば嬉しいです。