スモールビジネス向けに知っておきたい知識が書かれた良書でした。
正直な話、本書で特別に目新しい概念や発想に出会うということはないと思います。
他のマーケティング本でも書かれているほど比較的普遍的な内容といって差し支えないかと思います。
が、その普遍的な内容が実にわかりやすく身近なものとしてスーッと自分の中に入ってきます。
専門用語などが乱れ飛ぶようなマーケティング本ではないのに、基本を忠実におさえてくれるのは著者の技量によるところなのだと思います。
以下、本書から得た知識にプラスして今後にしていきたい行動をメモしておきます。
「売り込み」ではなく「情報」を発信していく
私もDM(Eメールですが)を出すことがあります。
その際は「文章に相手のメリットを出せ!」と息巻いているのですが、今思えば相手のメリットを強引に盛り込んだ売り込み作業だった気はします。
相手のメリットの追求に問題はなくとも強引に付加されたメリットでは相手の心は動かないことでしょう。
そうでなくて、相手に有用な役立つ情報として自分のビジネスの情報をお届けする。
すると北風と太陽の寓話のように相手は自らコートを脱ぐわけですね。
「独自の価値」の認識
結局のところ、自分のビジネスの「独自の価値」を決めるのは自分たちの顧客と思います。
ゆえに、スタートアップなどのビジネスが未成熟段階のビジネスでは顧客が少なく独自の価値の把握が本当に難しいのです。
ところがその独自の価値が把握できぬままに、DMを出さねばならなかったり、HPを作って情報を発信しなければならなかったり。
自分が何者なのかの定義もおぼつかぬというのに世に自らの存在をアピールしていく矛盾さに我ながら滑稽さを感じることすらあります。
ある程度はやむを得ないところもありますが、できるだけ早くこの「独自の価値」について認識することが効率的なビジネスにつながるのだと思います。
お客様を「ただ一人」にまで絞ってみよう
これもよくいわれるターゲットを絞るですが、前述の独自の価値の把握がままならぬとココがおかしくなってしまいますね。
本著内では「自分は誰にラブレターを出すのか」とありますが、未だわからないのが、自分の好みに合わせて高嶺の花と思われる相手にも果敢に挑戦するのが良いのか、それとも色の良い返答がもらえそうな相手に多少の妥協をして送るのが良いのか。
ビジネスは相手のためでもありますが、やはり自分のためといった側面もあり、未だどっちつかずでいるのが正直なところです。
ターゲット設定ひとつで社会的ビジネス価値と、個人的ビジネス価値の両者が決まるといって過言ではないので慎重に決めたいところです。
お客さまと関係性を築く
ものすごく共感できるのに、これが一番むずかしいと感じています。
これまで私は人間関係は意識的に関係性を築こうと心がけたことはありません。すべての人間関係は自然発生的であり、意図的に築いたものではなかったのです。
相手との関係性を意識して行動することは個人レベルではなかったのですが、確かに今後のビジネスにおいては必要なことと思えます。
誰だって嫌いな人からよりは好きな人からモノを買いたいのは当たり前のことです。
意図的関係性を築くのではなく、逆説的に「お客さまを身近な人として認識」することのほうがやりやすいかもしれませんね。
ただ、相手の望む理想の扱われ方とのさじ加減が今度は難しそうですが。
クーポンの代わりの「すごろく」
具体的な行動というわけではないのですが、このアイディアがすごく気にいったのでメモしておきます。
これは、とあるお店で「そもそもクーポンってお店を思い出して、リピートする動機になっているか?」と考えた末のアイディアなのだそうです。
内容はシンプルで、お店のほうで「すごろく」を預かっておき、お客さまが来店された際にサイコロをふって出た目に対応したサービスを受けられるというもの。
お客さまにとってはわざわざクーポンを保管する必要がないのも嬉しいですし、どんなサービスを受けられるか楽しみになるのが良いですね。
一見、「財布に入れてもらわないと思い出してもらえないのでは」と思いがちですが、財布に一度入れたクーポンはまとまったタイミングでそのままゴミ箱行きになるケースが多いですし、まったくではないにしろ抜群の効果とは言いがたいのではないでしょうか。
そういえば私個人も、美容院のポイントカードをいつも無くすので店員さんが「これからはこちらでお預かりしておきますね」と提案してくれたことがありましたが、やはり以降はその美容院に通い続けました。
手元のクーポンとは反対の「ボトルキープ」の原理なのかもしれませんね。
短絡的に思考停止のクーポンを配布してしまいそうですが、これはクーポンより「よりお客さまのため」でもあり「より自分のため」になっているのが本当に素晴らしいアイディアだと思います。
製品やサービスの「意味づけ」を再定義して新たな価値を探る
これもよく言われる「切り口」の話ですが、製品やサービスをあるがままに提供するのではなく、違った意味付けをすることに更なる価値を発想できないかと考えてみたいですね。
前述の「独自の価値」のところでもふれましたが、ビジネスの提供側はどうしても自らのビジネス認識が一辺倒になりがちですが、あえて違う意味づけを探ることで新たな付加価値を発見する努力を続けていく姿勢は常に意識したいと思ったのでメモしておきました。
「有る」ことを「有る」と言う
この超シンプルなことができていないことがいかに多いか。
つまり「冷やし中華はじめました」です。これが無ければ冷やし中華が食べられるかどうかがそもそもわかりませんよね。
こんなに単純なことながらサービスの提供者側は、普段は社内で暗黙のままに了解されているものだから、外部の人間にもわかっている気になってしまう。
信じられないことですが、自分たちがイチオシと思っている製品の機能を、長い時間をかけてあまりに熱心に研究開発しすぎたせいで社会的認知があることと錯覚し、ホームページになどに当該機能の説明が未掲載のままだったことがあります。
この「ないこと」に気がつくというのは非常にセンスのいることなので、その事実に気がついたのはホームページが公開されてしばらく経った後でした。
ここでも「何を有る」というかは「独自の価値」が認識できていないとおかしなことになってしまうでしょう。
中華料理店がラーメンやチャーハンが「有る」というようでは中華料理店の社会的認知からすれば行き過ぎな行為と思いますが、時期モノであり店によるところの大きい冷やし中華に関しては「有ることを有るという」ことが必要となるでしょう。
つまり自分たちのビジネスの把握が至らぬと中華料理店の店先に「ラーメンありマス」となってしまうわけです(笑)。
今回、電子書籍版で本書を読んだのですが、電子書籍版限定で巻末に「売れるチラシの作り方10の法則」というチラシづくりにおいて意識したいポイントをまとめた付録があります。
こちらをご覧になりたい方はぜひ電子書籍版でお求めになることをオススメします。